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しかしこの最低価格が高めで、現制度では売却益を充当せざるをえない職員退職金財源を賄って余りある額まで引き上げられたため、応札がなかった。この時期が選択されたのは、光陽ターミナル供用と加徳島(釜山新港)開発計画発表の直前であり、売却価格が最も高くなることが予想されたからであった。実際には経済不況の影響に加えて、複数プロジェクトの動向と後述の(光陽の)料金政策の変更がリスクとなってしまった。BCTOCの退職金引当不足額は700億ウォンを上回る(当座の余剰人員整理のための退職金必要額として、BCTOCによれば400億ウォン)。BCTOC民営化のもうひとつの理由として、現行の納付金算定方式では子城台ターミナルからKCTAへの納付金が過小となってしまうことも指摘されている。

BCTOCについては、本年春の戡湾ターミナル完全供用時に再度一括売却を行う予定で、現在、資産再評価などの作業を行っている。しかし実際の売却時期は未定であり、政府側にも早期売却をはかるインセンティブがない(KMIインタビュー)。

子城台ターミナルの貨物取扱量が減少している一方で、BCTOCの職員数は1998年度中に100人程度の自然減が見込まれる程度であり、現行組織のままでは基本的に変化しない。このような中で競合する大規模ターミナルを建設したこと自体が、MOMAFのBCTOC民営化の意志を前提としたものとも理解できる。

 

(2) 東釜山コンテナ埠頭(株)(Pusan East Container Terminal; PECT)など

東釜山コンテナ埠頭(株)(PECT)は1991年に設立された。ターミナル・オペレーションの方法についてはBCTOCと共通点が多いが、ガントリー・クレーンなどのオペレーションを全て自前職員によっていること、「ザ・フォーミュラ」についてはKCTA出資の25%分についてのみ適用され、BCTOCと同額の粗利益があったとしてKCTAへの納付は4分の1となること、などの差異はある。PECTからKCTAへの納付金は毎年500億ウォン程度であり、収入の25%に対して納付金は半分程度をしめる。

他のターミナル・オペレーターとステベ会社の間の業務契約は1ヵ月毎に更新され、ターミナル・オペレーターが運営任命権を交付し、この権利がステベ会社間で売買されている(戡湾ターミナルのケース)。

 

(3) 港湾労働

韓国の港湾労働者には、クレーンの運転などの熟練労働に従事する常用労働者、ならびにシグナルマンやラッシングマンなどからなる単純労働者である日雇労働者がいる。後者でクローズドショップ制がとられ、港湾労働組合が港湾ごとに設立され、港湾間での労働の移動は行えない。また雇用を行うステベ会社の意向とは別に労働者数が決められてきた。この中で、ステベ会社が港湾労組に日雇労働者の派遣を依頼する形態がとられてきた。日雇労働者数は1994年現在で11,864人であり、経年的には微増減を繰り返している。

 

 

 

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