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今後は自治体が行政サービスを競うことができるような財政的環境を整えると同時に、自治体主導の長期的な地域ビジョンのもとに地元のニーズにあった産業基盤整備と、それに対応した産業育成を実行する必要があろう。

 

4. 港務局制度にみる財政上の自律性

─新居浜港務局のケース─

 

(1) 歴史的背景

愛媛県新居浜港は、住友家が開発した別子銅山の中継港として江戸時代から栄えてきた。

明治時代・大正時代を通じて、時の政府に社会資本を整備する十分な資金がなかったため、しばしば民間企業が港湾の建設・維持・管理を行ってきた。新居浜港は、住友鉱山別子精練所、および住友化学工業の前身である住友肥料製造所が、港湾の建設・維持・管理を行った工業港である。

昭和11年に住友アルミニウム精練株式会社が操業を開始し、原材料であるボーキサイト鉱を輸入する大型船舶の入港が急増した。同年に、旅客用浮桟橋が完成し、阪神・別府航路等の旅客船が寄港し始めた。新居浜港の本港地区に、住友金属鉱山(株)、住友化学工業(株)、住友共同電力(株)が集まっている。この地区に、工場に直結した港湾とかつての旅客用浮桟橋があった。昭和26年9月22日に新居浜港は港湾法に基づく重要港湾に指定され、同年12月1月に港湾法に基づく港務局が設立されて今日の管理体制を整えた。昭和39年には、新居浜市を含む東予地域が新産業都市に指定されたため、地域内の中核港として新居浜港に港湾施設の整備計画が必要となった。そのため、東港地区を中心とした公共埠頭、臨海工業団地造成等を計画し、昭和41年に港湾審議会で審議承認された。新居浜港は、民間企業の専用埠頭をもとに発展してきたという背景から公共の港湾施設が不足しているとされ、中距離フェリー輸送の基地、木材取扱施設、大規模地震対策施設、マリーナ計画など港湾計画に基づく整備事業が続けられている。

 

(2) 海上出入貨物の概要

平成10年度において、新浜港の入港船舶総トン数(内航)は全国で第36位、入港船舶総トン数(合計)は全国で第50位に位置する。年間取扱量の41%が外貿、59%が内貿となっている。出入貨物を品目別にみると、輸出は約26万トンで、化学工業品が80%、金属機械工業品と鉱産品が20%を占める。輸入は約20万トンで、鉱産品が90%、化学工業品と金属機械工業品が10%を占める。移出は約18万トンで、化学工業品33%、鉱産品32%、軽工業品・金属機械工業品他35%となっている。移入は約14万トンで、化学工業品70%、鉱産品16%、金属機械工業品他14%である。

 

 

 

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