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第7章

港湾管理者が直面する政策執行上の課題

 

1. 港湾整備に関する政策決定者の施策

 

本章では、わが国コンテナ港湾のバース稼働率の低さ、相対的な港湾料金の高さ、港湾サービス・施設の使い勝手の改善といった個別の課題を解決するために導入された1]大水深コンテナターミナルの整備、2]新たな港湾整備方式の導入、3]総合輸入ターミナル等の整備、について港湾管理者の視点からみた政策執行上の課題を事例を使って解説する。1]と2]に関連するのが2.公共投資としての港湾整備と財政上の説明責任であり、港湾投資とバース利用料金を引き下げるための公的資金の投入、ならびに建設後の料金設定に関して、港湾管理者と埠頭公社が抱えている財政上の問題を整理する。1]と3]に関連するのが3.地域政策としての港湾投資の役割であり、地方の中核国際港湾を管理する自治体が直面している港湾投資とコンテナターミナル建設後の集貨体制の問題を解説する。これらの事例により、政策担当者が直面する課題を解決するために導入した政策が、港湾管理者にあらたな負担を課している実態を考える。

別の課題として、公共部門の事業を民営化する際に表面化すると考えられるのが、港湾管理における公共部門と民間部門の役割分担である。4.港務局制度にみる財政上の自律性では、社会資本の建設・運営において民設公営という特異なパターンをとった新居浜港務局のケースを紹介する。港務局は、今日的な課題である地方分権を先取りした管理組織であり、自治体間の広域連携を統括する組織のモデルとして提案されることがある。しかし、現在の港務局制度のもとでは港湾管理者としての財政上の自律性が確保されていない。この事例は、民間企業が社会資本を建設し、その管理を公共部門が行う場合には、管理を行う組織の議決・執行のルール、および財政的な自律性を事前に確定しなければ民営化の効果を十分に発揮し得ないことを示している。

 

 

 

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