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2. 公共投資としての港湾整備と財政上の説明責任

─コンテナヤード整備の新方式にみる埠頭公社の役割─

 

現在、公社方式(ターミナル全体を埠頭公社が整備し、特定の船社に専用に貸し付ける方式)によるコンテナターミナルの整備・管理運営では貸付料が高く、公共方式(岸壁は公共で整備し、不特定の船社がその都度利用料を払って利用する方式)では公社方式と比べて利用効率が低いという問題がある。これを解決するために平成10年度から中枢国際港湾のコンテナターミナルの整備・管理・運営について、公社方式と公共方式の折衷型の整備方式が導入された。これが新方式である。ここでは、平成10年度から導入された新方式による大水深バースの整備のしくみと、それにともなう財政上の問題について、国、港湾管理者、埠頭公社と借受者の関係に焦点をあて解説する。

 

(1) 外貿埠頭公団と埠頭公社の歴史

わが国では、昭和40年代に入ると貿易量の急増とコンテナリゼーションの進展によって、外貿定期船埠頭の不足が問題視され始めた。当時は、速やかに外貿埠頭を整備するため、国や自治体の出資金の他、長期低利の借入金を調達する組織が必要とされた。また、港湾法のもとでは、公共事業により整備された埠頭の使用は公共使用に限られる。そのため、専用使用の埠頭を必要としていた当時の状況に十分に対応できなかった。そこで、昭和42年8月に外貿埠頭公団法が制定され、同年10月に東京港と横浜港に京浜港外貿埠頭公団が、大阪港と神戸港に阪神外貿埠頭公団が発足した。

その後、外貿埠頭公団の設立目的であった外貿埠頭の緊急整備が達成されたことを受けて、両公団の解散が閣議決定され実施された。昭和56年4月には「外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律」が制定公布され、埠頭公団の業務は、港湾管理者が設立した財団法人で、運輸大臣が指定する法人(指定法人)が承継することになった。これが現在の埠頭公団であり、このときに東京、横浜、大阪、神戸の各港に埠頭公社が設立された。その後、港湾法に基づいて名古屋港埠頭公社が設立され、現在は5つの埠頭公社が存在する。

 

(2) 整備計画の根拠法

公社が外貿埠頭の建設、または改良工事を行うときには、「外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律(略称:承継法)」に基づいて整備計画を策定し、運輸大臣に提出して認可を受けなければならない。

 

(3) 大阪港における大水深バースの整備

現在、大阪港で建設中の大水深バースは、夢洲(ゆめしま)の東岸に並ぶC10、C11、C12の3つである。C10は公共方式、すなわち港湾管理者である大阪市が建設し、管理運営する公共利用の埠頭である。C11とC12が公社方式で、(財)大阪港埠頭公社が建設し、管理運営する専用利用の埠頭である。公社方式の場合、大阪市が運輸大臣に公有水面埋め立て免許の認可を運輸大臣に申請し、認可を受けてから、建設主体である(財)大阪港埠頭公社が大阪市から埋め立て免許を受けて手続きを終了する。

 

 

 

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