日本財団 図書館


それらのうちオークランドでは、1988年に移管機関によって、新会社が港湾委員会から購入すべき資産が特定され、価格交渉が行われ、資金調達方法と新会社の形態が決定された。会社設立も同年中に行われた。新会社には、営利的目標と社会的目標とがあいまいにならないような目標設定が行われ、非営利事業は継承されなかった。また経営役員は、半数以上が他産業から勧誘されるとされた。

港湾委員会当時の港湾は、市街地に広大な用地をもち、その一部を将来の港湾計画用に留保していた。しかし現在ではポートフォリオを適正化し、将来の港湾機能に役割を見いだせない資産を識別し、売却益をあげている。結局、14港に13の会社が設立され、以後8年間で13中7が65%以上の取扱量増加を経験した一方、全社が職員数を削減している。

 

6. 民営化の効果

 

第1期と第2期の両民営化中間期の1980年代の英国の港湾には、民間、トラスト、自治体直営という公民間での様々な所有形態が存在した。このため代替的な所有形態のもつ相対的な効率性が見極めやすい。

Liu(1995)は、1983年から1990年の間の英国の28港をサンプルとして計量分析を行っている。彼は、産出として、水先、艀、留、荷役、および倉庫の売上を採用するが、ただし資産売却収入は控除している。産出を売上で代替できる理由として、彼は港湾間競争の存在をあげる。

モデルの構造は、以下のとおりである。

Yit=f(Xitβ)+Vit-Uitないし

Yit=f(Xitβ)+Vit-Ui

ただし、i;港湾、t;年度、Y;産出、X;投入、およびβ;技術係数、とする。残差は2項に分離し、U(≧0);非効率項、およびV;統計的ノイズとし、残差の歪度から両項を分離する。そのうえで残差2項の標準偏差λ=σu/σvによって定義された(非)効率性の上に3形態の所有、港湾規模、立地に関するダミー変数、ならびに資本集約度の変数を回帰させている。

推定結果では、民間とトラストの両タイプに対する自治体直営の効率は若干低いものの、このような所有の差が生産性に与える影響は有意ではない。その一方で、欧州大陸側か大西洋側かという立地の影響は大きく、生産性を11%左右するとされている(大陸側の生産性が高い)。もっともLiuの計量分析については、産出を売上で代表していること、ならびに非効率自体に関する仮定等分析前提の妥当性には異論があろう。

民営化の効果を直接にはかるものではないが、Tongzon(1995)も国際主要港湾の比較によって生産性に関する推定を行っている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION