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1991年法による最初の売却は、ティーズ・アンド・ハートルプール港務局の地域運輸会社への売却であった。当該売却における交通相の売却決定基準は、

1] 経営者・従業員売却(MEBO)への特段の配慮

2] 自由市場における最高値実現と民営化後の自治体の利益の間のトレード・オフへの配慮

3] 購入会社役員との事業計画に関する密接な検討

であった。

1992年にはミドウェイおよびティルバリー(ロンドン港)両港が経営者・従業員買収(MEBO)によって落札され、フォス港が株式市場に参加した。これらの大規模トラスト港湾の民営化によって、100大商港取扱量のうち60%以上は民間セクター管理港が占めるに至った。

 

(3) 民営化政策の評価

Thomas(1994)が他論文の引用によって整理しているところで、民営化(一般)の目的は、

1] 規制構造改善によって 経営者責任を与え、資本市場の規律を実現し、事業機会を拡大すること

2] 閉鎖・買収の圧力を課し、労組の力を減じ、効率的な人材活用を可能にすること

3] 政府歳入の増加

4] 従業員持株により、株主を分散させること

にあるとされる。

トラスト港湾を対象とした91年法の趣旨もほぼ対応したもので、とりわけ1]のなかでの投資や残地開発を目的としていた。

一方、トラスト港湾の民営化反対論の理由としては、

1] 投資資金が配当に回ること

2] 既に中央・地方政府からの多様な資金供与制度があること

3] 公有下で十分営利的なこと

4] 既に積極的不動産投資を行っていること

5] 広域独占につながること

6] トラスト制度の手続き的な望ましさ

7] 後継会社が営利追求に走ることへの懸念

8] 単なる政府の収入獲得であること

があげられている。

民営化後の諸港は積極的に事業拡大を行ったが、その中心は港湾事業に直接には必要のない港湾周辺分野であった(英国港湾連合(ABP)のケース)。とりわけ不動産開発が目立ち、急増した収益源は港湾用地の非海運企業への賃貸収入であった。個別労働協約や新規慣行の導入によって従業員の雇用条件が変化し、労働生産性が大幅に改善された。ただしこれは民営化よりは全国港湾労働計画(NDLS)廃止の結果と考えられた。

 

 

 

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