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1989年には、日雇労働者の保護・常用化を目的とした1946年港湾労働者(雇用規制)法と、これに基づく全国港湾労働計画(NDLS)を廃止した。

港湾労働者を柔軟に雇用できるNDLS適用港とそうでない非適用港とでは効率性に大きな差があった。NLDSは、大規模港湾を適用対象としていたため、結果として中小港湾が大規模港湾よりも有利となり、当初は大きな差があった適用港と非適用港との間の取扱貨物量の格差は縮小に向かった。この中で非適用港、とりわけフェリクストウ港との競争に敗れた港湾とそこにおける労働者を救済するため、港運事業者協会自身がNDLSの廃止を求めるに至った。

英国の港湾における第1期民営化として、1981年法は英国運輸港湾委員会(BTDB)を英国港湾連合(ABP)に再編した。同連合は1983年に民営化され、株の49%が売却された。旧来の法的義務を残すため、ABP持株会社を会社法会社とする仕組みがとられたが、この仕組みは余り機能しなかった。英国鉄道委員会(BRB)も同様に民営化された。

 

(2) トラスト港湾の民営化

第1期民営化は、民営化自体には成功したものの、トラスト港湾(と自治体直営港湾)の民営化は遅れた。その理由は、個別に法案を議会通過させることが困難であったためである。トラスト港湾は、一般的に収益性は高かったものの、保有資産を抵当化して資金調達を行うことができず、事業拡大の制約となっていた。

この問題を解決するため、1991年港湾法は、第2期の民営化として、トラスト港湾の1985年会社法下で登録された民間(株式)会社への移管を規定した。

年間売上5億ポンド超の15港については、91年法施行後2年を経過しても(93年7月以後)売却を行わないとき、交通相が強制的に売却計画を策定できるとされた。また50%の課徴金が維持され、売却収入の半分が国庫、残りが新規民間会社に還元されるものとされた。この還元規定は売却会社の資産価値を高め、株価引き上げにつながる側面をもつ。売却後の土地処分にも課徴金が規定された。

政府は、このような制度に基づいて、公開上場、ないし競争入札による経営者や従業員への株式売却(MEBO)を意図した。英国での民営化手法としてこのほか随意売却がある。各民営化手法の利点と欠点は以下のとおりである。

1] 株式公開;資産価値を最大にし、最も広範な所有構造を保証し、売却プレミアムが広く分配される一方、買収が難しくなる。証券取引側の要請と手数料のために大規模事業に限られる。

2] 競争入札;株式ではなく資産売却の形態をとり、一人の入札者に売却される。経営者か従業員に売却が行われれば効率改善のインセンティブとなる。

3] 随意売却;購入者を自由に選択でき、価格は交渉によって決定されるが、市場価格以下となる。

 

 

 

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