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市幹部、マスポートでは州知事、ニューヨーク/ニュージャージーでは2州の州知事)、立法による被任命権規定の有無(サンフランシスコではあり、ポートランドではなし)、評議委員議席の荷主、港湾労働者、政党、市といった特定グループへの公式留保の有無(ミルウォーキーではあり、オークランドではなし)、投票の場合の地理的範囲(Port Huenemeでは区、タコマではより広範囲)、比例代表制等の投票方法、である。評議委員会規定のほかにも、監査報告、借入限度、課税権、等にも港湾間で差異がある。

 

4. 英国の港湾民営化政策

 

(1) 1980年代までの港湾政策

英国においては1979年に保守党によるサッチャー政権が誕生し、民営化と規制緩和を政策目標とした。その中で公有企業の関与が大きかった港湾が民営化プログラムのなかに位置付けられ、国際貿易を支えるインフラとして、港湾効率化政策の必要が高まった。1980年代初めの第1期民営化以前、英国の港湾には大きく4種類の所有形態があった。

1] 国有企業体;1962年の英国運輸委員会(BTC)廃止によって、国有港湾の所有は以下に移管された。

a. 英国運輸港湾委員会(BTDB) 大規模港湾を所有

b. 英国水路委員会(BWB) 小規模な河川港を所有

c. 英国鉄道委員会(BRB) 海峡フェリー連絡港を所有

2] トラスト(信託、自治)港湾;トラスト(準政府機関である法定受託団体)によって所有管理されるもので、義務、責任、権限を規定した(国の)会社法の下に設立されたものである。交通大臣任命の主要利用者、財界人、官僚からなる評議委員会が意思決定を行う。1960年代の湾口毎のグループ化による再編の結果、当該形態のシェアが最大であった。

3] 地方自治体直営港湾;地方の条例に従って運営されるもの。

4] 少数の民間(専用)港湾と特殊会社港湾

これらの管理主体とは別に、港湾区域内において保全、水先、浚渫、倉庫、荷役等の施設・サービスを提供する公、民両セクターの会社が存在した。荷役会社数は急激に減少していたが、46%は港湾管理者が所有する荷役会社であり、それらが登録済労働者の70%以上を雇用していた(1980年)。

1962年以前、英国の港湾は取扱量の最大化を志向し、サービスの質には配慮していたものの、財務目標が不明確であった。このため、財務成果が不十分にもかかわらず、初期に低資本で形成した耐用年数の長い資産によって生き残りをはたしていた。財務成果は70年代終わりには少し改善に向かうが、旧式で過剰な施設からの投資撤退は難しかった。 1981年交通法の下で全国港湾審議会(NPC)を廃止し、1984年には国の港湾投資に対する承認・不承認の統制をなくした。

 

 

 

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