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a. 政府と民間では会計方法が異なるため、賃貸・売却価格の決定が困難になり、とりわけ公有港湾では、埠頭の賃貸・売却価格の大宗を占める地価がコストに反映されない。

b. 一部に政府が成果目標を課しているケースがあるが、これを厳密に行うと監査と施行が高コストにつく(実際は時間当り取扱TEU、年間取扱量程度)。民間事業者に取扱量の処理方法や投資戦略を申告させ、当該計画を入札決定に使う方法もある。

c. 過剰な課金を防ぎ、コスト削減を動機付けるための(上限)料金規制等の必要。一般的に高サービスへの投資のため、民間の方が料金が高い。料金決定については、規制する、しない、料金水準のみ規制する報酬率規制を行う、の方法がある。

d. 競争導入をはかる場合、民営化は重要である。しかし民間は、公正競争の保証のない公との競争を回避する。バランスをとったのが香港であり、香港ではコンテナ取扱量の需要予測に際し、競争のための余剰キャパシティーを加味して開発許可証を交付している。

e. 立法改正は、政府の民営化への意志を証明することになるが、一方で追加的規制も規定してしまう。

f. 公民間移管には、移管運営機関が必要となる。

g. 将来も政府には、政策決定者、安全・環境・契約条件遵守のための規制者、(香港型)計画・開発者、地主(部分的民営化では多くの港湾サービス提供)、積極的経営理事・株主、黄金株保有者、専門家の雇用者、(ロッテルダム型の)マーケティング主体、ならびに民間独占に対抗する競争者、としての役割は残る。

 

3. 米国の港湾管理制度

 

Ircha(1995)の整理にしたがって、米国の港湾管理制度について略述すると、以下のとおりである。

米国には、様々な公共企業体の形をとる港湾管理者があり、母体となる(州・)自治体等の関係も様々である。港湾管理者が自治体の政策手段となるべきか、相当の自主性をもつべきかにも両論があり、概して西部沿岸港に分権型が多く、東部沿岸港には集権型が多い。経営情報の開示(アカウンタビリティー)の観点からみたとき、主たる問題は評議委員会と経営幹部間の関係にあり、評議委員は意思決定に必要な情報をもたず、事後監査の機能をもつにとどまっている。そのため、経営幹部側に権限が集中している。主たる運営目標は、海上貿易量の最大化におかれている。

論点となる評議委員会の性格には、以下のようなバリエーションがある。すなわち、何らかの委員会を有するか否か(大部分の港湾が有するSewardはなし)、評議委員の決定は任命によるのか、投票によるのか(大部分は任命)、任命権者はだれか(ロスアンゼルスでは市長、ロングビーチでは

 

 

 

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