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当該港全体の港湾収入のなかでカバーが可能で、また統一料金によって国内他港との間で料金格差が生じ競争上不利になることもなかった。港湾環境整備負担金としての入港料にしても、環境コスト内部化の趣旨自体は誤ったものでない。しかし、実際には環境コストの大小にかかわらず地方港を含めて課徴され、港湾料金の画一化を助長してきた。

1997年5月から係留施設使用料の24時間制が12時間制に改められ、昨年には大阪港が前日入港割引を導入する等、利用実態に即した料金形成に向かう方向にはある。神戸港では1998年7月から初入港船の入港料および岸壁使用料の免除が開始され、一定の成果をあげたといわれる。しかし料金体系のわずかな変更にも長期にわたる交渉と調整を要しており、現在行われているスピードでの改革では、物流市場におけるダイナミックな変化に到底ついていけそうにない。

 

4. 港湾運送と港湾産業の課題

 

国際的な趨勢として大手総合物流企業は、コンサルタントとして荷主企業に生産から物流までを含めたシステム全体を提案し、提案内容の相当部分について業務委託を受けるいわゆるロジスティクス・サポートを行っている。もっとも進化した形態がサード・パーティー・ロジスティクスと呼ばれる。港湾運送事業者がそのような業務を完全にこなすことは容易ではないと考えられるが、現実に港湾荷役作業とコンテナのバンニングとデバンニングを担ってきたノウハウは生かされるべきであろう。海外での物流分野の労務管理に特化する等の形での事業展開にも可能性があり、商社との合弁によるタイのレムチャバン港等の成功例がある。このような展開に成功することは、本業であるわが国港湾での物流サービスにもフィードバックできるノウハウを蓄積することにもなる(この観点からの港湾運送業者に対する提案については、統計研究会(1997)参照)。

港湾運送事業や関連事業が規模・範囲の経済を実現し、取扱貨物量の波動への対応力を増し、荷主が求める国際ネットワークを形成してゆくためには、行革委小委も強調しているように、わが国の港湾は、所有・管理・運営等の縦の次元においても、また同一業務組織間の横の次元においても組織が細分化されすぎている。

港運の元請と専業者のうち、一層の荷役作業機械化が進行したとしても港湾荷役作業自体がなくなるわけではなく、専業者の業務は効率性達成ののち継続されることになる。下請比率規制の緩和による元請・下請関係の柔軟化、ならびに集約化についてはすでに決定されている。しかし、元請同士を含めた規模拡大をはかるうえでは、現状の船社系元請と荷主系元請の境界線も障害となる。国際物流事業全体のアライアンス変化として問題をとらえる必要がある。

国際貨物とりわけ輸入物流の増大のなかで、製品構造の軽薄短小化が進行した結果、コンテナ化率の上昇にもかかわらずFCL貨物の比率は増加せず、依然としてバンニング、デバンニングが行われている。

 

 

 

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