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その間荷主側の関心は先進国間での料金や物流コストの比較という観点を離れて、現実に競争関係にある近接したアジア諸国等との間でのサービス水準を含めた比較を強調するようになっていった。

 

3. 港湾物流をめぐる政策論議と改善への取り組み

 

(1) 港湾運送業の規制緩和

物流関係の様々な規制緩和策については多くの審議会や研究会でとりまとめられ、それらは1996年春の規制緩和推進計画に関する閣議決定において一応の集大成をみた。しかし同年秋の経済審議会行動計画委員会物流ワーキングにおいては、分野ごとの政策のでこぼこや個別テーマに関する不完全さが認識された。複合一貫輸送を効率化するためには、1989年の物流二法制定時にも先送りされた港湾運営分野の改革が必須であるが、港湾関係政策が規制緩和プログラムのなかに位置づけられて来なかったことも確認された。そして港運業規制緩和、民営化を含めた港湾管理・運営効率化、その他水先規制見直し等のバランスのとれた港湾政策の必要が提案された。

行政改革委員会等の議論を経て、現在までに、港湾運送業の事業免許制を許可制にし、料金認可制を届出制にする、事業区分を簡素化する、等の部分的規制緩和が決定された。運輸政策審議会港湾運送小委員会では、2000年に12港で参入規制の緩和を行う実行案が審議中である。

港運事業の参入・料金規制緩和のフレームワークは、1989年制定の物流二法によるトラックの規制緩和と同等である。しかし当時のトラック業界と比較すれば、現在の港湾運送業界に対する内外からの規制緩和要求の方が強い。またこの間の10年間に内外の物流における規制緩和は相当に進行しており、今回の港運に関する緩和が不十分なものではないかという懸念が残る。

事前協議制に代表されるような港運問題に対する当局側の姿勢は、ほぼ一貫して労使慣行問題が港湾運送事業法規制とは無関係というものであった。しかし、一般的に規制と慣行とは問題の性格として切り離せない。現在の港湾運送事業法にも規定のない東京港と横浜港の間での経営資源の移動に対する制約、あるいは内陸FAZ(輸入促進地域)への港湾運送事業法同等規制の適用等は単なる慣行問題としては理解できない。当局側が主張してきたように港湾運送問題が業界慣行に根ざすとしても、住み分けや調整等の業界慣行の多くは、適用除外が明示されていなければ独占禁止法のチェックに従い、放任されるべきものではなかったはずである。

1996年の二大コンテナ航路のコンソーシアム再編の過程で、港湾利用パターンの変更を迫られながら、外国船社はそのためのわが国の港運側との調整にてこずった。そのような中で米国とEUから日本の港運サービスに関する質問・要望が行われ、当該再編がスタートした時点で港運事前協議

 

 

 

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