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そのために非効率や問題点が顕在化せず、多くの港湾や港湾産業がそこそこの生き残りを果たしてきており、またしばらくそのような状況が続く可能性がある。周辺諸国の拠点港湾と比較して、わが国のそれは投資時期が早く、この点も価格競争力、少なくとも財務成果につながっている。全体としてわが国に有利なハンデつきの国際競争にもかかわらず、形成が不利になっていることが問題である。

 

2. 物流内外価格差論議

 

(1) 物流内外価格差をめぐる論議の高まり

ここ数年、国内物流ないし国際物流の国内部分のコスト/運賃に関する国際比較が盛んに行われるようになってきた。無形のサービスである非貿易財の内外価格差については、従来は論議の対象になりにくかった。しかし、製品貿易以外の形態での様々な国際分業や国際間競争が発生するようになった。製造業の空洞化と同様にサービス業の空洞化が懸念され、国際物流ハブの海外移転、極端な例としては郵便のリメールのように海外が国内輸送のハブ化することも全く考えられなくはない。並行して、1996年には経済審議会において海運カボタージュ(外国事業者による国内輸送)自由化が議論に上り、沖縄県や石油荷主が引き続きカボタージュ自由化を検討中といわれるなど、関係した論議は徐々に高まりをみせている。

 

(2) 内外価格差へのマクロアプローチ

物流内外価格差を知る方法として、大きく分けると産業連関表を用いて国や産業全体の傾向や負担感をみるマクロアプローチ、ならびに個々のサービス毎の対価に注目するミクロアプローチとがある。

利用運送振興会(1994)は、財貨生産額に占める物流費比率(商品の価額に占める物流費の比率)、ならびに国内総生産に対する総物流コスト比率(わが国の経済規模に対する総物流コスト比率)を求めている。推計は産業連関表によるが、自家用運送の減価償却費と人件費、卸売自家倉庫、自家梱包をラフな推定で考慮しているところに特徴がある。補足資料として米英のマクロ物流費も添付している。この結果については、西沢脩(1996)によって個別企業アンケート調査と合わせて集大成されている。ミクロ・マクロ両方の売上高に対する物流コスト比が計測され、米英に比べてわが国の減少が小さく、物流費のなかでの輸送費のシェアが増大していることが示されている。

西村清彦(1996)は、流通のW/R(卸売売上/小売売上)比率同様の発想によって、産業連関表から卸、小売り、運輸セクターを取り出し、わが国の流通マージン率(=商業マージン率+運輸マージン率)が米国と異なって低下していないとの結論を導いている。

 

 

 

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