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第5章

港湾運送の改革と物流政策

 

1. わが国の港湾を取り巻く環境の変化

 

国際的水平分業の増加によって、わが国では製品輸入が継続的に増加している。生産プロセスのなかに物流が組み込まれた結果、高度で効率的な国際物流サービスが求められるようになった。わが国においては1990年代初めまで、コンテナ輸送量において輸出が輸入を上回ってきたため、国内の物流サービス供給者は、輸出超過を前提とした戦略策定や施設整備を行ってきた。しかし輸出入逆転により、港湾での輸入貨物滞留時間の長さに伴うスペース不足、原材料と比べて製品輸送で要求される高い保管品質、品目の多様性に伴いコンテナ・デバンニング・サービスに要求される高品質性、関連した流通加工ニーズへの対応、空コンテナ・ポジショニング問題が生じた。

こうしたなかにあって、わが国の地方港はコンテナに関しては極端な輸入超過となった。一定量を確保できる輸出荷主が立地している場合でも、その偏在のために輸出型港湾と輸入型港湾とに分化している。新潟港などをはじめ地方港でのコンテナ航路開設はずいぶん進んだが、航路が釜山などの東アジアの特定港向けに集中していることもあって、地方港全体としてわが国の国際物流に果たす役割は限定されている。

わが国の基幹港湾は、コンテナ取扱量における世界ランキングの順位は下がっているものの、取扱絶対量自体はごく最近まで増加させてきた。国内の相当部分のターミナル・デマンドに対し独占力をもつ神戸、横浜などの港湾の取扱量を増やすためには、アジア諸国からフィーダー船でわが国の基幹港湾に運ばれた後、本船に積み替えられて北米などに輸送される三国間トランシップ(継越)貨物を増加させなくてはならない。しかしわが国と周辺国の間でのトランシップ機能をめぐる港湾間競争関係は、周辺国での民間経済投資と港湾整備との間の時間的ギャップによって決定づけられており、今後当分は中国華北地域での港湾投資動向に左右される。トランシップをいかに評価するかによって、拠点港湾政策は相当に変化せざるをえないが、トランシップ貨物呼び込みの経済効果を改めて点検する必要がある(運輸経済研究センター(1997a)参照)。

わが国は一国としてはターミナル・デマンドが大きく、基幹港湾は依然として地の利を得ている。

 

 

 

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