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その一方で、五大港は地元(三大都市圏)のコスト重視型FCL、サービス重視型貨物両方の集荷だけでなく、地方圏のサービス重視型貨物の集荷に対しても競争力を持っている。逆に言うならば、日本の地方港のほとんどは、画一化・単純化された港湾物流サービスしかもっていないため、距離という要因のみを競争力の源泉として持つにすぎない。それに対して五大港は多様な港湾物流サービスを保持していることが独自の競争力を形成し、地元のみならず遠隔地のサービス重視型貨物をも集荷できる体制が整っているのである。したがって五大港−地方港間の競争関係は基本的に地方圏のコスト重視型FCL貨物の集荷において見られる(図表I-4-11)。

 

図表I-4-11 五大港から見た五大港と地方港の集荷圏・集荷貨物特性

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4. 東アジア域内における港湾間関係と港湾の「競争力」

 

(1) 東アジアにおける港湾間競争の構図

1) 五大湖─東アジア主要港間競争

しばしば論じられるように、現在、日本の主要港=五大港は他の東アジア主要港との間で東アジア域内のコンテナ貨物の集荷競争を行っている。ここでは日本以外の東アジア域内コンテナ貨物の集荷に関して日本の五大港が他の東アジア主要港に対してどのような競争力を持っているのか、あるいは持っていないのかを見てみよう。

1] 施設面

施設面ではすでに日本の主要港は他の東アジア主要港と比べて優位性を持っているとは言えない。コンテナ物流は機械化・画一化・標準化された作業が多いため、後発港湾でも十分競争力を持ちえるし、しばしば後発港湾の方が最新設備を導入できるという後発性の利益が発揮されやすい。

2] サービス面

サービス面では日本の主要コンテナ港は他の東アジア主要港が行っている24時間365日同一条件でのフル稼働体制はとっていない。このことによって日本の港湾をコンテナ船社が利用する場合に、スケジュールが立てにくいというデメリットが生じている。ただしコンテナ貨物の荷役作業について言うならば、1クレーン当たりのコンテナ積み卸しのスピードや、作業の安全性・正確性といった荷役作業の「品質」は世界トップ・クラスであると言われている。

 

 

 

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