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3] コスト面

コスト面では日本の一般的な労働コストや地価が他の東アジア諸国と比べて高いため、もともと競争力がつきにくい。しばしば日本の荷役料金の高さが問題にされるが、日本人の一般的な賃金が他の東アジア諸国と比べておおむね高いことを考えるならば、荷役料金の切り下げは自ずから限度があることになる。港頭地区の地価に関しては各港湾管理者がその賃貸料を安くできる仕組みを作るならば、かなりの利用料金引下げは可能である。

4] 東アジア規模での地方コンテナ港湾の台頭

地方コンテナ港湾の台頭は日本に特殊な現象ではない。海外調査編─香港の所でも詳述するが、中国においても同様の状況が見られるし、また東アジア諸国がそれぞれにコンテナ港湾の整備を進めつつあることも、いわば東アジア規模での「地方コンテナ港湾の台頭」と言えなくもない。少なくとも東アジア規模でコンテナ港湾施設が分散化傾向にあること、大荷主主導型での地元近接コンテナ港湾の利用が一般化しつつあることを考えるならば、この後、東アジア域内各地域のコンテナ貨物を日本の五大港で取り扱うということはきわめて難しいと言わざるを得ない。

 

2) 新たな港湾間連携=東アジア主要港─日本の地方港間連携

ところで既に述べた日本国内における五大港─地方港間の港湾間分業は、東アジア域内におけるコンテナ港湾間関係と密接に関連している。というのも多くの地方港が日本以外の東アジア域内主要港(プサン、香港、高雄、シンガポール等)との間に航路を開設することによって国際コンテナ港湾化しているからである。とりわけ地方港発着貨物が東アジア主要港で国際トランシップされ、欧米との間でやりとりされるという場合、従来、五大港が国内トランシップでまかなってきたという機能が東アジア主要港に海外移転していることになる。したがって地方圏のコスト重視型貨物が地元地方港で取り扱われるようになったということは、単に地方港─五大港間集荷競争が発生しているというだけでなく、東アジア主要港─五大港間で日本の地方圏のコスト重視型貨物の集荷競争が行われているということでもある。国内における五大港─地方港間競争は、東アジア・レベルで見るならば、五大港─東アジア主要港間競争なのである。

また日本以外の東アジア域内の国際トランシップ貨物に関しては、東アジア主要港のハード、ソフト両面での整備の進展にともない、日本の五大港はその集荷力を喪失・低下させている。

図表I-4-12のように、東アジア規模で見るならば、日本の地方圏は、コスト重視型貨物に関しては他の東アジア域内主要港の集荷圏に、サービス重視型貨物に関しては日本の五大港の集荷圏になっているのである。

 

図表I-4-12 五大港と東アジア主要港の集荷圏

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