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その際、コンテナ船業の機能は、荷主のロジスティクス戦略に対応するために、ネットワーク・プロバイダーとしての機能から、システム・オペレーターとしての機能を果たすように変革していかなければならないのである。

 

2. 市場タイプを組み込んだ運賃決定モデル

 

(1) 市場のタイプについての仮説

本節では、三大航路市場の往航と復航の市場にどのような環境構造的差異や市場行動上の相違があるのかを、先に触れたContainerisation International誌の1993年第4四半期〜96年第4四半期のデータを用いて実証的に検討する。この場合、特定の航路の往航市場の時系列データ・サンプル(標本)数は僅かに13に過ぎない。しかし、これでは、自由度を確保する上で、十分とはいえないので、本節では、往航市場と復航市場を一つに纏めて得られた26個のサンプルを、パネルデータとして一括して取り扱うという方法を採用する。もちろんこれでも自由度は十分とは言い難いけれども、データの利用可能性に限界がある中で採用された次善的方法である。今後データの利用可能性は時間の経過と共に高まっていくから、さらに信頼度の高い分析結果を容易に得る事が可能になるであろう。このように往航市場と復航市場を一つに纏めて考察する場合、理論的には、そこには、以下で述べるような2種類の異なる市場のタイプのいずれかが機能しているのではないか、という仮説を提示できよう(図表I-2-1参照)。

 

図表I-2-1 市場タイプ仮説の特徴

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(注) 「折衷型市場仮説」は本章では採用しない。

 

構造環境的差異のある市場とは、往航市場と復航市場の構造は異なっているが、両市場における企業の行動は同じである市場をいう。特にコンテナ船市場の場合、一般的には、往航市場と復航市場は、同一の企業によって構成されているから、市場構造は異なるが、市場行動は全く同じというケースを十分に考える事ができるであろう。このような市場を「構造相違型市場」と呼ぼう。

 

 

 

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