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第2章

荷主のロジスティクス戦略に対応するコンテナ船業の機能展望

 

1. 問題提起

 

本章の目的は、世界の三大コンテナ航路市場における運賃決定の態様を実証的に分析した結果を通じて、コンテナ船業の産業組織と戦略のあり方を検討し、その機能を展望することである。その際コンテナ船運賃のデータとして、Containerisation International誌に、3か月ごとに掲載されている世界の三大コンテナ航路の運賃データを用いる。この運賃データは、1993年第4四半期以降について利用可能であり、また本章で実際に利用したのは、1996年第4四半期に至る13四半期という極めて短期の期間である。それ以後については、運賃以外のデータの利用可能性に制約があったからである。したがって、このような短期の考察によって、コンテナ船運賃の決定状態をトレンドとサイクルの両面から総合的にとらえることは不可能である。しかし、コンテナ運賃決定の総合的フレームワークのあり方は、アジア・太平洋の東航市場(1983年第1四半期〜94年第4四半期)と西航市場(1988年第1四半期〜94年第4四半期)を実証的に考察した別稿(財団法人関西経済研究センター『国際競争下の拠点港湾に関する研究調査』1998年3月、第4章)おいて明らかになっている。

そこで本章では、その基本モデルを用いて、太平洋航路、ヨーロッパ航路、及び大西洋航路という、世界三大コンテナ航路の往航と復航の市場にどのような環境構造的差異や市場行動上の相違があるのかを、とりわけコンテナ船企業の水平的統合(あるいは連携)戦略と製造業のロジスティクス戦略に対応した垂直的統合戦略の作用に焦点を当てて実証的に考察しよう。それによって、世界三大コンテナ市場におけるコンテナ船業の産業組織と運賃決定機構の特徴を明らかにすることができよう。

問題は、コンテナ船業の採用する2種類の戦略のうちで、とりわけ垂直的統合戦略が好ましい成果を上げているのかどうかと言う事に尽きる。これについては、後に明らかになるように、市場別に見ると惨澹たる結果が得られている。しかし、今後コンテナ船企業の連携による水平的統合が世界的規模で進展していくのに歩調を合わせて、高まっていくであろうグローバル・マネジメントの視点を取り入れるならば、垂直的統合戦略に新たな展望が開く可能性は高い。

 

 

 

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