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TPLが発展する以前、ブローカー、フォワーダー事業の規制が緩和された時に悪質な業者が多数参入し、荷主が支払った運賃を持ち逃げする事件が相次いだ。ボンドの積み増しなど制度の改善が行われているものの、これらの事件も一部の荷主の記憶に残っている。

以上のようにアセット型とノンアセット型に代表されるTPLの類型の優劣は、相反する側面があり、トレード・オフの関係にある。抜本的なSCMの改革という面からはノンアセット型が有利とする向きもある。またアセット型の場合も子会社として独立させ、親会社だけでなく必要に応じて他社の資産を利用している場合が多い。これらの点からみてノンアセット型、少なくともMuller(1993)の指摘するインテグレイテッド・プロバイダーが勢力を増しそうである。しかし、アセット型の確実性を高く評価する荷主もあり、実際に大手TPLのなかには両類型が併存している。これらを考え合わせると、どの類型が有利かは荷主の置かれた環境条件によって決まり、現在は両者を必要とする荷主に分かれてれているようである。

 

3. 国際物流におけるフォワーダーの役割

 

(1) フォワーダーの概念

フォワーダーは、一般に「他人の需要に応じて、物品運送の取次、代弁、媒介、利用運送及びこれらに付帯する業務を行うことを業とするものである」と定義される。国際物流におけるフォワーダーの役割は、基本的には運送取次、運送代弁、運送媒介、利用運送にある。

しかし、これら本質的な機能のみでは、現代の荷主ニーズに応えることは困難であり、様々な付帯的機能を果たしている。付帯的機能としては、運送関係書類作成、輸送の調整、スペース手配、貨物の混載、仕分け、集配、道路運送、コンテナ取扱、通関、保管、在庫管理、流通加工、梱包、情報処理、保険代理、金融補助等である。このような機能を組み合わせ、フォワーダーは様々な総合的な国際物流サービスを提供している。

各国ともフォワーダーに関する基本的な概念は共通しているものの、細部には異なる点が多い。以下主要国についてフォワーダーの概念と現状をみる。

 

1) 日本

日本では、広い意味では取次業として商法で「運送取扱人」として定義されている。実際には、取次業のみならず、利用運送業、通関業、実運送業を兼業しており、それらについてはそれぞれの事業法で定義される。

国際複合一貫輸送を主催するフォワーダーは、NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)とも呼ばれ、外航海運を利用運送する外航利用運送業に該当する。

 

 

 

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