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第I部 現状分析編

 

第1章

荷主ニーズ高度化に対応した物流事業者の対応

 

1. 荷主ニーズの高度化─サプライチェーン・マネジメント(SCM)─

 

(1) サプライチェーン・マネジメント(SCM)への関心の高まり

荷主企業の物流ニーズは、販売物流の効率化から始まり、調達物流、生産物流へと拡大していった。調達、生産、販売物流を個別に効率化するだけでは限界があることから、やがてこれらを統合したロジスティクス・マネジメントへと拡大していった。

しかし、物流効率化は、単一企業のロジスティクス・マネジメント導入では不十分であった。物流の基本的な役割は、販売者と購入者の間の時間的、空間的な懸隔の克服である。また販売者にとっての販売物流は、購入者にとって調達物流である。このことは、単に販売者または購入者どちらかだけがロジスティクス・マネジメントの考え方によって効率化しても、相手先が従来どおりのやり方で物流を処理していては非効率性が残ることを意味する。逆からみれば、もし販売者と購入者の間で協力し合って物流を効率化すれば、さらに効果が高まることが期待されるのである。

一方、最近の日米構造協議等を通じ、日本の物流の高コスト構造が指摘されるようになった。しばしば比較される米国の場合には、80年代後半以降、企業を超えたロジスティクス・マネジメントが取り入れられ、抜本的な見直しが行われている。その考え方は、製造業者、卸売業者、小売業者間のサプライチェーン(供給連鎖)を一貫して管理しようとすることに力点が置かれ、サプライチェーン・マネジメント(SCM)と呼ばれている。

SCMに代表される効率化により、米国のロジスティクス費用は低下傾向にある。Bradley(1998)によれば、国内総生産(GDP)に占める在庫の比率は1990年の27.2%から1997年の24.5%に低下、在庫維持費用、輸送費用、管理費を足し合わせた狭義のロジスティクス・コストの対GDP比率は同期間に11.6%から10.7%に低下している。ただし、最近になって、大規模なロジスティクス改善がひととおり行き渡ったこともあり、費用低減傾向は頭打ちになっているという。

日本では、大手スーパー、コンビニエンスストア(CVS)がいちはやくSCMの考え方を取り入れ、納入業者との物流システムを改善していった。その結果、物流品揃えによる差別化や新鮮さの訴求による顧客満足を高めながら、物流コストを削減することを可能にした。

 

 

 

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