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このようにしてSCMの有効性は日本でも認識されるようになり、物流ニーズの高度化と物流費用の低減という一見相反する課題に対処するための新たな政策目標として取り上げられることになった。

 

(2) 総合物流施策大綱におけるサプライチェーン・マネジメント(SCM)

物流は、産業、生活に幅広くかかわっており、日本の構造改革にとって重要な課題と認識されるようになった。1986年に閣議決定された「経済構造の変革と創造のためのプログラム」では、物流改革が経済構造改革のなかで重要な課題のひとつとして位置づけられ、2001年までにコストを含めて国際的に遜色ない水準のサービスの実現を目指すこととなった。

運輸省、通産省を始めとする物流関連省庁は、物流課題に総合的に対処するための具体的方策の検討に着手した。1997年4月、国際的に遜色のない水準の物流サービスを適切なコストで可能にするための総合的な方策をとりまとめた「総合物流施策大綱」が閣議決定された。

総合物流施策大綱は、基本的目標として3項目を掲げている。

1]  アジア太平洋地域で最も利便性が高く魅力的なサービス

2]  産業立地競争力の阻害要因とならない物流コスト

3]  環境負荷の軽減

これらの目標は、「基本的考え方」に示されるように、「世界経済のグローバル化が一層進展するなか、企業が立地する国を自由に選ぶという国際的な大競争時代が到来して」いるという国際競争下での産業立地競争力強化という考え方が色濃く反映されている。生産者は、国境を越えて産業立地上優位な場所を探し、「在庫管理技術を極限まで進めたグローバルなジャスト・イン・タイムの調達」を行おうとする。また、流通分野では、「消費者を起点として、小売、中間流通及び生産者の各機能を強化したシステムの構築が始まりつつある」。さらに環境問題のような社会的課題に応えていくことが求められているのである。

総合物流施策大綱では、このような目標を達成するための具体的な方策が示される。基本的考え方のなかに示される流通分野の認識にみられるように、SCMへの取組みは重要な方策として取り上げられている。注目されるのは、「物流システムの高度化」のうち「商慣行の改善」で、直接SCMについて次のように言及していることである。

「ECR、QR等のサプライチェーン・マネジメント(商慣行の見直し、電子商取引の推進や取引単位の標準化などによる企業間連携を通じて消費から生産までの情報と物の流れを効率化することで、消費者ニーズを反映した商品をスピーディーに適正な価格で提供する仕組み)に係る技術開発及び実証実験を進めて、商流及び物流の両面から流通全体の効率化を進める。」

ここでSCMの推進が物流のみならず商流とあわせ流通全体の効率化に寄与することを謳い、さらに代表的な手法であるECR(Efficient Consumer Response)、QR(Quick Response)をあげて、技術開発、実証試験を進めることが示されているのである。

 

 

 

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