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第III部 モデル分析編

第III部では、まず、第1章で、港湾運営政策が国際コンテナ定期輸送市場に与える影響を分析するため、港湾間ネットワーク均衡モデルを提案した。モデルは、国際コンテナ定期輸送市場を、政府、船社、荷主の3種類のプレーヤーが介入するゲーム市場とみなし、シュタッケルベルグ均衡を仮定した。

第2章では、モデルの現象再現性を検討するため、1993年度の国内貨物純流動調査を基に、東アジア地域を中心とする国際コンテナ貨物OD表を作成し、実際にモデルで計算した結果と実績を比較した。その結果、本モデルは精度高く、船社の行動、荷主の行動を再現出来ることが確認できた。再現性は国内各港湾の航路別取り扱い貨物量と港湾背後圏を実績値と計算値で比較した。また、外国港湾については、計算で求めた各港湾のトランシップ貨物量と実績値を比較した。

第3章では、モデルを用いて、6つのケースで港湾料金政策の影響を分析した。すなわち、1]阪神港の港湾諸費用を釜山港並に低減した場合、2]阪神港の荷役料金を釜山港並に低減した場合、3]阪神港の港湾料金と荷役料金を同時に釜山港並に低減した場合、4]阪神港・京浜港の港湾料金を釜山港並に低減した場合、5]阪神港・京浜港の荷役料金を同時に釜山港並に低減した場合、6]阪神港・京浜港の港湾料金および荷役料金を同時に釜山港並に低減した場合、について分析した。その結果、ケース1]は国内の名古屋港・関門港のシェアを阪神港が奪う結果となり、釜山港のトランシップ貨物の一部を奪い、更に、中国(上海港)からのトランシップが増加する。ケース2]では、ケース1]より影響は拡大し、京浜港のトランシップが若干量阪神に奪われ、ケース3]では、京浜港のトランシップはほとんど阪神港に奪われる。また、釜山港のトランシップは大きく阪神港に奪われるだけでなく、韓国・中国からのトランシップ貨物が阪神港に集まる結果となる。ケース4]〜ケース6]は京浜港がケース1]〜3]に対応してその勢力を回復することが分かった。

第4章では、本研究で得られた成果と今後の課題についてまとめた。

 

 

 

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