日本財団 図書館


(1) 過去1年間の非常用雇用者数〔第78表参照〕

この1年間に非常用雇用者を「増やした」と回答した企業は全体では22.2%なのに対し、「減らした」とする企業が27.4%あり後者の方が高くなっている。昨年の結果では「増やした」が29.3%、「減らした」が11.9%で、「増やした」企業割合が高く、一昨年も「増やした」とする企業が多かった。今回は今までとは明らかに相違があり従来とは様変わりの様相を見せている。この原因を考えてみると、企業が常用雇用者が辞めたあと非常用雇用者で穴埋めしなくなったのか、あるいは仕事、業務そのものを外部に委託するアウトソーシングを進めていることと関係がありそうである。「おおむね変わらない」も46.3%で昨年の52.8%からかなり減っている。過去においては、雇用調整は非常用雇用者を調整弁として減じ、その後常用雇用者を減ずるという図式であったが、昨今は、常用雇用者を減じ、非常用雇用者を増やす方策がとられている。しかしながら、それすら減少の方向となっており、非常用雇用者の雇用情勢はこの点からも悪化しているといえる。

ア. 企業規模別

規模別にみると3千人以上の大企業ほど過去1年間で非常用雇用者を減らしていることが顕著で、「5千人以上」では「増やした」22%に対し「減らした」37%(昨年調査では33%、10%)、「3・4千人台」の企業では同じく増は18%、減は37%(同32%、9%)となっているが、「1・2千人台」、「千人未満」では「増やした」、「減らした」とも20%台で差はない。しかし、「減らした」企業割合を昨年と比較すると、大企業と同様に2千人台以下の企業においても「減らした」企業割合が増えており、この点では、この1年間で非常用雇用者を「減らした」企業が増えていることは3千人台以上の企業と同様である。

イ. 産業別

次に、産業別に分解してみるとそれぞれの業種によって違いがあることがわかる。非常用雇用者を「減らした」と回答した企業は全ての産業において昨年の回答を上回っており、とくに「運輸・通信業」は67%の企業が「減らした」としており昨年の20%に比べ差が大きい。一方、規模別にみた場合と違い産業・業種のなかには「増やした」とする企業もある。「卸売・小売業、飲食店」は「増やした」が32%に対し「減らした」は27%、「金融・保険業、不動産業」も「増やした」50%、「減らした」11%となっており、この2業種は昨年・一昨年の調査の結果も「増やした」方が「減らした」より遥かに多く、前述の常用雇用者の過去1年間の減らした状況が高い割合を示していることからも、これらの業種の場合、いわゆる正社員の削減が進み、確実に穴埋めを非常用雇用者に求め、常用雇用者から非常用雇用者への転換(人件費の変動費化)が毎年徐々に図られていることがうかがえる。なお、回答社数の多い「製造業」については「増やした」、「減らした」ともに27%であるが、この産業も「減らした」の割合は昨年から比べるとこの1年間で倍増している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION