以上の関係から、外板面に取り合う構造は、すぼみ度側をモールドラインとして、その反対:開度側が板逃となるのである。
この要領を[図2.3.2 モールドラインと板逃]に示す。
中心線部材は、モールドライン原則(一線片面板逃)よりも、船の左右舷対称の原則の方を優先とし、例外的に、中心モールドライン板厚振り分けとしている。
また船型線図で描かれる線は、全てモールドラインであるが、船の幅方向、深さ方向は、骨付き面である板内面で定義されてきたのに、長さ方向のみは、不都合にも伝統的に板外面で定義されてきた。
これは、かって船首尾端には、鍛造や鋳造のマッシプ(固まり形状)な船首材:ステムと船尾骨材:スターンフレームが配され、板内外とするような区分がなかったことによる。やがて溶接での信頼性が高まり、板構造に変わってきたが、船の主要寸法定義は、船に関連する船級登録などの社会的規範の基礎要件であるため、いまなお合理的に変更するに至っていない。(ISOでの『造船におけるコンピュータ応用』77年のTCに、日本から持ち掛けたことがあるが、その後立ち消えのままである。)
現状は[図2.3.3 船首尾端のモールドライン]のようにされている。
●船首:-
以前は規則通りに、板逃を先端のR範囲は外面モールドとし、次第に内面に入れ替わるように現物線図を求め、板厚段差も外面に出す折衷方式で補正してきたが、この作業は面倒であり、やがて廃れてきた。現状は図のように先端でも板外逃げなので、厳密には規則に対し板厚:tだけ船長さ:Lが長くなっていることになるが、測度承認機関からは黙認を得ているようである。言い訳としては「tは、一日の気温変動によるLの熱膨脹に見合う程度だから、誤差の範囲」としているが、正確に言えば「正確にやる」だけの価値がないからである。
●船尾骨材:-
こちらは構造機能上で板が厚く、かつ推進性能上で外面フラッシュが要求されるので、船首端と同じ訳にはゆかない。ここも例外として、図に示すよう規則通りに、骨材板厚内でモールドラインを処理している。船尾骨材より上の通常外板部は、原則に戻し船首端に準じている。