日本財団 図書館


2.3.1 取付位置と板/型鋼の逃げ

造船の船殻構造では、板・骨構成の位置寸法を線で表し、それぞれの板厚はその線のどちら側かにあるとするのが、一般である。この約束は、工業ではガラス窓製作に見出だせるくらいの独特のものである。

表示記号は、すでに[図1.3.3 中心線と一般の取付位置記入]に示した通りである。

この片面で構造を示す線をモールドラインと呼ぶ。同じ板面の構造物に板厚差があれば、当然に一本の線であるモールドライン側がフラッシュ面となり、板逃側にのみ段差が生じる。

もし構造上の都合で、どうしても反モールドライン側を一線(フラッシュ)にしたいときは、反モールドライン側に(段差ナシ)一線を設けて、これを仮モールド(ライン)と称している。仮モールドは、構造物の位置寸法を表すのではなく、あくまで板逃とフラッシュ面の「つじつま」を合わせるための便法にすぎない。したがって、この取扱いは型定規作成レベルであり、線図や構造現図で描かれるものではない。それだけに型定規作成において重要なポイントとなる。具体例は後述する。

 

板逃をモールドラインのどちらにするか…は、骨付き面:スティフナーサイドに関係する。骨付き面とは、構造物を骨組みと板に分けたときの骨の比較的多く取り付く板の面を言い、フラッシュ面を選ぶ方が、骨の板付き縁に段差切欠を設けないで済む。実際に形鋼のウェブ縁に段差の裾引きをすれば、ウェブ縁に倣い開先をとるのと同じく、切断歪み取りが面倒なだけではなく、ウェブ寸法が浅くなってしまう。その浅くなるスカントリング:材料寸法で設計しておかなければならない。

モールドライン=スティフナーサイドとする所以である。

 

板と板が隅肉(T)取合いのとき、直角取り合いなら、どちらをスティフナーサイドにしても同じであるが、取付度があるときは、すぼみ度と開度で骨の形状が変わる。例としてウェブの倒れ止め(トリッピシグ)BKT.を[図2.3.1 スティフナーサイド]に示す。図の形状を見るだけで直感的に、すぼみ度側のBKT.の方が、開度側のものより面積が狭く、つまり軽くて、しかもどちらか片面しかないのなら、やはりすぼみ度側のBKT.の方が、倒れ止めとしての強さ(機能)も優れていることが判るだろう。

この構造上の優劣から、すぼみ度側をスティフナーサイドとするのである。こうすれば同じように直付きから次第に倣度が発生してきても、直切りのまま行ける範囲があり、いくらか倣い開先を切る範囲が少なくてすむ。

 

050-1.gif

図2.3.1 スティフナーサイド

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION