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短納期建造を迫られる造船において、スターターとして重要な型定規作成の日程の正確度は、このエンジニアリング抜きには保てない。

本件は、また本書の末尾で、改めてまとめて述べることにする。

 

主要な形状である外周と、それに沿う開孔:スロット、スキャロップは区分される。

コーナースキャロップは外周の一部ではあるが、開孔ととらえるほうがいい。型定規での表現、数値現図の形状定義において、コーナー点を与えるのが一般性があるからである。そのスキャロップ形状も、このコーナー点を押さえた円弧か“標準形”となる。

本件は、次章『2.1 切断』の項で再説する。

 

曲加工前の形状では、原則としてマーキン面に「中性軸/面」展開形状で与える。

「中性軸/面」とは曲加工によって伸びも縮みもしない線/層のことで、別書『造船現図展開』に詳しい。

 

また外周形状には、後述するように「端伸ばしどや「粗切り」の場合があるが、その指示をカッティングプランに記載し、型・定規では正規形状[予定線]だけを与える方式がある。同型船連続建造で、単に「伸ばし(辺)情報」のみが実績による改善変更となる…のであれば、取り扱い上は便利であろう。

もっとも、カッティングプランの担う機能は一材単位「取材情報」指示のみと割り切って、型定規の担う一品単位の「製造情報」機能とは、明確に解りやすく分けられているほうがいい。そうすれば皮板部材などの[一品=一材]では、カッティングプランは不要となるからである。

 

なお「取材情報」とは、一般に素材仕様寸法・取材部品位置と、NC切断ではカッターパス(切断順・火口移動経路)であるが、本書の範囲外でもあり、詳細には触れない。

 

1.1.2 情報の表示

現図型に表示する情報の種類や意味内容は、全く同じであっても、企業伝承/地域方言、言葉/符丁、工程区分、詳細標準、強調など…で、各造船所の間には、特に大手を中心として、かなりの差異がある。

 

これらの差異は、由来・根拠などでの、それなりの理由付けはできるものの、そう必然的・絶対的なものはなく、ほとんどが慣習と見做してよい。

実例をあげれば、かって呉NBCが呉造船所に吸収されたとき統合したものを、佐伯の臼杵鉄工所に「一部変えて移転」したが、その表示が、やがては大分・福岡地区の中小造船所に伝搬して広がっているし、また地域・伝統の異なる4社が合併した石川島播磨の船舶事業部では「既存のどれにもとらわれない、ゼロベースの見直しによる新規約」を検討して、統一している。

 

 

 

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