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そういうこともあって、本書での具体例では、筆者が制定に参画し使い慣れた石川島播磨:IHI標準にて表示し、説明することにする。ただし、すでに数値現図に切り替わって長く、手作業の標準のないものは、適当にモディファイして例示する。

 

これからの造船業において、加工・組み立て専門(横請)外注:アウトソーシングの推進や熟練技能者の流動を効率化するには、日本すべての造船工業界において、この情報表示の標準化:JIS-F制定に向けての整理統合が必要であろう。

 

1.2 作画現図と数値現図

在来の現図場:モールドロフトにて手作業にておこなうアナログ現図を「作画現図」とよび、NC化によって始まったデジタル現図を「数値現図」と区別する。作画現図が現図床の上に実寸で描かれるのに対し、数値現図はコンピュータ装置の中に原数値:実寸対応…で作りだされる。本書の標題の「原寸」とは、前者の「実寸」と後者の「原数値」を意味する。

最近までは「縮尺現図」と呼ばれて、透明フイルムに型を縮尺(1/10)で描き、光学的に拡大(10倍)投影してマーキンする方法があった。EPM:電子写真方式は、その代表的なものである。縮尺型は、手書きでもNC作画でも、いずれでもよかった。現在はすでに廃止されており、本書では触れない。顧みれば、かっては縮尺図形(型)線を自動トレースして拡大切断する現行のアイトレーサに似た方式の装置(モノポールの輸入、リモートグラフなどの開発)があり、短い期間ではあったが実用に供されている。いずれにしても「縮尺」は「原寸」でないため、どこかで誤差も伝達拡大することになり、形状精度が致命的に劣った。

 

さて、同じ「原寸」といっても作画現図と数値現図では、技能者の教育・熟練、作業の環境・姿勢・体力、同時/分散処理…などの運用条件、延尺処理、現図床の温度変動・型定規の時効変形…などの精度条件に基本的な差異がある。

 

また統一すべきと先述した情報表示においても、“墨差し”や、フエルトペンによる手記入と、プロッターやドラフターによる自動作画では、合わせるわけにはゆかない。

本書では、まだ多くの小型造船所に残っている手作業:作画現図を主体に、コンピュータ処理:数値現図を添えて説明してゆく。

 

数値現図では「原寸」を、平面/空間の直角座標系で表現する。その座標系には、船体、部材(單品)、素材(ネスティング)、定盤(加工/組立)…といった区分があり、必要に応じ相互に座標変換される。

 

 

 

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