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故意にやったことではないにしても、印刷によるメディア・電波によるメディアにおけるハンセン病のイメージを再編し、変革するための有意義な努力がなされなければならない。まず、第一段階は、メディア戦略を考案することである。そこで、提案されたことは、各国で独自のメディア戦略が開発されるために、WHOが各国の政府とともに主導的な役割を果たしてはどうか?という案だった。これは、「どのようなものを制作し、どのように広め、どういう人たちを対象にし、ねらいは何か?」といった問いに答えるものになるだろう。そして、次の段階は、国家レベルよりもむしろ地域レベルで、印刷メディア・電波による発信元向けの指導計画(オリエンテーション)を作り、特集記事の筆者・日曜版の編集者やテレビ・ラジオのドキュメンタリー番組制作者などが、ハンセン病の正しいイメージを作り出せるようにする。第一段階として、ハンセン病に関するデータバンクの開発、そして、メディアが注目するような、人間の温かさを示すエピソードや写真の集大成を作ることである。宗教界、社会・経済界のリーダーや、宗派の代表などが、積極的にハンセン病の擁護活動への着手を促されるかもしれない。このようなキャンペーンでは、民間伝承や民衆芸術、演劇などを利用することが、文化的な背景に適応するために大いに役立つだろう。スティグマの原因となる身体に残る障害や変形が否定的なイメージを生み出すかどうか話し合われた。しかし、ワークショップでは、障害の残る患者数の減少、進行性の症例や変形する割合の低下などの、プラスの面を伝えていけば、より前向きなイメージ作りに役立つと考えた。

e) スティグマについても、詳細にわたる話合いがもたれた。スティグマは、社会的な距離となって現れる全面的拒否に始まり、全面的受入までの社会の反応として定義付けられた。社会的距離・ステイグマの程度を測ることは、社会科学の中の新しい研究分野である。スティグマが克服されれば、ハンセン病に対する戦いに前向きな要素となって役立つことになると参加者達で確認した。

 

2. 地域社会の積極的な協力

発展途上国の回復者の大半は農村地域に居住していると思われる。このような地域社会では、家族(核家族でも複合家族でも)や自給自足社会が安全策や防護手段となる。この安全策を友好に活用できれば、病気の予防・発見、治療、リハビリテーションなどに役立ち、最終的に地域社会基盤のリハビリテーションにつながるだろう。農村社会には強いきずながあり、適切にこの関係を活用すれば、地域社会ぐるみで回復者の阻害を防ぐこともできるだろう。ハンセン病問題は世界的に考えると膨大な問題であるように思えるが、村のレベルで地域社会の問題として考えると、対処が可能となることも指摘された。さらに、教会や日曜学校、村議会など伝統的な施設が活用できるというメリットもある。この課題の討議を深めていくうちに、村のレベルにおいて、ヘルス・ワーカーの役割に明らかな変化があることがわかった。その役割が保健サービスを提供者から推進者へ、また、単なる提供者から保健教育者およびカウンセラーへと広がれば、私たちのハンセン病に対する戦いにおいて重要な変化をもたらすことになる。これを実現するためには村そのものを拠点に活動する地域社会の指導者達に、技術的な支援をしなければならなくなる。エレクトロニクス革命によって、情報の提供は容易になった。問題は、適切なヘルス・ワーカーに、適切な情報を選択して提供することである。

 

 

 

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