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感染率が低い地域でのハンセン病対策組織

 

議長:P.ソーンダーソン博士

 

1) 感染率が低い状況とは?

感染率の低さを測る尺度として、私たちは次の3つの指標を考えた。つまり、患者発見率、登録された有病率、障害を有する率の3つである。ワークショップでは、患者発見率(CDR)をもっとも適した尺度だと考えている。患者の発見率はサービスを必要とする患者の実数を表しており、他の2つの指標の基礎になるものでもある。登録された有病率が1万人に1人なら、10万人に約5人の患者発見率に相当する。そこで新しく発見される患者が1年間に10万人あたり5人未満であれば、その地域を「感染率の低い地域」と考えることにした。地理的に見ると、多くの国では感染率が非常に低い地域と、多くの患者がいる地域に分かれていることがわかる(たとえば中国では、全体的には患者発見率が非常に低いが、ほとんどのハンセン病患者が発見されるのは3つの地域に限られている)。

 

ある地域でハンセン病に対するサービスがどれくらい必要かを考えるとき、障害を有する率が重要な統計資料になる。後遺症の障害が21世紀の大きな問題になるだろう。

 

2) 患者の発見

感染率が少ないとされる先進国でも、ハンセン病患者が長い間(4年から6年ぐらい)診断されないままになっている場合がある。病気の感染率が低くなると、診断の遅れが増えるように思われる。先進国では、ハンセン病患者は皮膚科にゆだねられている。感染率は低いが途上国では、上から下への縦型のハンセン病対策プログラムを解体して、末端地域レベルで病変を発見し、診断と合併症の管理のために専門の施設に照会する方針に変える必要がある。病気の疑いのある人々を受け入れるために、民間の施設や従来からある機関も活用しなければならない。

 

3) 治療

大きな問題は、施設に通いやすいかどうかである。多くの患者がハンセン病の専門病院からはるかに離れた地域に居住している。MDTの配布はたとえば結核治療のような、他のプログラムと連携することができるだろう。末端地域の診療所では、前年に治療した患者数によって、ブリスターパックのMDTを必要量確保することができる。ごく遠隔地に住む患者に対しては、一度に3〜6ヶ月分の薬を渡してもよいだろう。

 

4) らい反応の管理

診断を受けてから5年間くらいは、らい反応がいつ起こっても不思議ではない。討議の結果、途上国で感染率の低い国では、末端地域で神経機能の査定ができる専門家をおくことは不可能だろうと思われた。ほとんどの患者は定期的に受け入れセンターに行くことができないので、患者自身がらい反応や神経炎の兆候を発見し、自分で報告して適切な治療を受けられるように、患者に対する教育方法を改善するべきである。そのようなシステムに、ハンセン病回復者が協力するのもよいだろう。訓練を受けてハンセン病の診断ができるようになった人が、らい反応や神経炎の管理や、ステロイド剤の処方ができるように訓練を受けることが望まれる。

 

 

 

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