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患者の早期発見

 

議長:M.T.フトゥーン博士

 

このワークショップでは、患者の発見に関して討議した。特に、患者を発見することの積極的・消極的な意味を考え、発見されたすべての患者が完全に治療を受けるための方策について話し合った。早期発見は何故必要か(感染を減らし、障害を予防し、プログラムの成果を監視する、など)を検討した結果、実際的な目的のために、このワークショップの中心課題を、障害の予防に早期発見が果たす役割とした。このため、早期発見を「障害が手、足、目、顔に現れないうちにハンセン病の症状を発見すること」と定義した。つまり、発症から診断を受けるまでの時間のずれを考慮せず、障害ゼロ(WHOの障害認定尺度)の段階での発見をめざすのである。

 

ハンセン病患者発見のために現在行っているテストは確実性に欠け、実地で活用しにくいことがわかった。また、病気の始まりと診断との時間とずれを知る実際的で正確な方法がなく、患者本人にたずねるほかない。ワークショップ参加者のほとんどが、これでは主観的すぎると感じていた。初期症状の単一の病変からは、ハンセン病と的確に診断できないことも話し合った。このグループでは、知覚の鈍化や、単一の病変ではっきり診断できない特異な症例(プログラムのほとんどは、PBかMBかのどちらかに分類する方法をとっている)について討議した。単一の病変が数年間診断されずにいる可能性や、この種の病変は自然に治癒する傾向があることも指摘された。診断の段階で障害は見つからないが、先の定義に従えばこれらも早期の症例に含まれる。しかし、監視の目的には使えない症例である。

 

早期発見の成果を監視するためには、現行のWHOの障害認定の尺度を使うことで意見が一致した。また、新しい患者の中では障害ゼロの割合を判断材料にすることも提言している。

 

早期発見をいっそう進めるために:

ハンセン病制圧プログラムの通常の活動の中に、次の項目を含めることが必要だと、グループは考えている。

 

◇ 周辺部地域で病気に対する意識を高める。このためには、都会と農村部の違いや、識字率のレベル、健康をめざす行動の違いなどを考慮して、対象となるグループにふさわしいメッセージを用意する。地域の意識を高めるために、もっともふさわしい人物(保健ワーカー以外に)を選ぶことも大切であろう。

◇ ハンセン病対策事業をプライマリー・ヘルスケア・システムに組み入れ、患者が自宅の近くで治療を受けられるようにする。

◇ 診断や治療を行う施設に入りやすい工夫をする。アクセスが容易で、障害の予防サービスを含む、質のよいケアを患者に提供する場所にする。

◇ グループは、強制的に患者の発見を進めるやり方を強調してはいけないと感じた。コストもかかるし、このようにして発見された患者の多くは、診断を受け入れようとしない。

 

 

 

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