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II. ワークショップレポ一ト

 

B) ワークショップレポート

ワークショップレポートは参考資料として収録しました。

なお、日本語訳は外部翻訳者による委託翻訳です。

(第15回国際ハンセン病学会事務局)

 

A. テーマ:ハンセン病とその制圧に関するワークショップ

モデレーター:W.C.S.スミス博士

 

病気の定義と抗菌療法

 

議長:R.ジェイコブソン博士

 

(A) ハンセン病の定義

WHOでは、「次の中から1つあるいはそれ以上の症状がある人、および治療の全行程をまだ終了していない人」をハンセン病患者と定義している。

一色素脱失や紅斑など皮膚の病変があり、はっきりとした知覚麻庫がある。

一末梢神経組織の異常。明確な神経肥厚や知覚麻庫がある。

一皮膚のスメア検査でプラスと判定される。

 

この定義は、治療に要する期間に関して、公衆衛生上の目的で決めたものである。しかし、ハンセン病の影響を受けた人は、M. lepraeに感染した結果、ほかにもいろいろな症状を呈する。ハンセン病を完全に定義するには、細菌学上、身体に現れた病変、能力障害、人間関係、社会的、文化的な影響、それに多くの社会では、特に女性に与える影響も含めて考える必要があると指摘された。さらに治療は、細菌を死滅させ、外に現れた進行性の症状を抑えるだけでは十分とはいえない。このグループでは、これらの問題を詳しく話し合った。上にあげたすべてを含む定義は難しいので、実際面ではWHOの専門家グループが定めた基本的な定義を受け入れることで、メンバーの大半が同意した。しかし、これは細菌を死滅させるだけでは終わらない患者のニーズを定義するための出発点にすぎない。このため、プログラム(縦型の単独プログラムでも横型の一般保健サービスでも)は、ハンセン病の影響を受けた人々の登録を含むよう強く勧告している。リアクションや神経炎、知覚麻庫、虹彩炎などの適切な治療を行ったり、治療中や治療後に起こってくるさまざまな症状のケアをする必要があるからである。このようにしてはじめて、有病率が低下するにつれて多くのプログラムが急速に変化している中で、患者が必要なケアを確実に受けることができるのである。

多剤療法が終わった後は、引き続き公衆衛生上の諸問題を管理することに加えて、ハンセン病患者がさらなる合併症を起こさないように、治療や予防のサービスを提供できるプログラムが望まれる。こうして今後の保健サービスは、感染を防ぐと同時に、ハンセン病の影響を受けた人々に医療面での救済とリハビリテーションを提供するという社会的な責任もになうことになるだろう。

 

(B) 抗菌療法

抗菌療法を、治療期間や安全性、効力、受けやすさ、平易さ、コストの点から考慮した。この6つはすべて重要だが、なかでも効力が鍵になると思われる。また、ほかの条件が同じなら、治療期間は短いほうが望ましいと、グループでは考えている。西暦2000年以降もMDTをブリスターパックで入手できるようにすることと、コストを理由に質のよい医薬品の提供がさまたげられてはいけないことで、意見の一致を見た。

もし効力の点で大差ない新しい療法が可能になっても、治療に要する期間が同じであれば、現在行われており、WHOが推進しているMDTにとって代わるほどのメリットはあまりないと考えられる。

臨床試験の結果は報告し、その効力や、副作用、リアクション、神経炎などに関する情報を公開しなければならないことが力説された。効力の決め手は、臨床的・細菌学的に改善が見られることであるが、再発を考慮することがさらに重要である。新しい療法の実施を決めるには、上に述べたすべての項目を検討するべきである。また、治療期間が短くなるにつれて、治療期間終了後に合併症の起こる可能性が高くなるし、そのような治療法からクロファジミンを除くと、ENLが起こる頻度が高くなるだろう。新しい治療法の実施計画には、これらの要素も考慮しなければならない。もちろん、これらの療法のコストも、実施上の諸問題とともに考えなければならない。

 

 

 

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