日本財団 図書館


補聴のためのPA入門

 

アシストホーン西日本代理店

(株)アキト 岡本芳孝

 

1. はじめに

 

「補聴のためのPA入門」などというタイトルがつくと違う世界の話のように思えてきて「私には関係がない」と思いがちですが、よく周りを見渡してみますと私達は日常生活の中で常に音響機器、PA機器と接して活動しています。ご家庭でお使いになるテレビ、ラジオといったAV機器も非常に高性能になりました。駅やオフィスビルの放送システムも格段に音声明瞭度が向上しましたし、私達が普段使用する会館の会議室なども最新のAVシステムが装備されるようになってきました。

また、これらの高性能な機器を使用者が特別に意識しなくても使いこなせるようにもなってきました。例えば私達がいつも身に着けている「補聴器」もそのひとつです。補聴器は最も小型でトップレベルの品質を誇る音響機器の一つです。あの小さなボディの中には、後に述べますが、マイクロフォン、コンプレッサー、ハウリングサプレッサー、イコライザー、アンプ、スピーカーといった多くの機能が搭載されていますし、最近ではデジタル化も進んでいます。私達はこの複雑な機器をそれほど専門的な知識なしに使うことができます。

私達がなにかと接する機会の多い「PA機器」「AV機器」を少しでも理解することは、きっと自分たちの音環境の向上に大きく役立つことと思います。

 

2. 情報伝達手段としてのPAシステム

 

私達は、日常生活の中で多くの情報に囲まれて生活しています。そして、その情報を次の人に伝えたり、他の人から情報をもらったりしています。他者とコミュニケーションをとるための情報伝達手段は多くありますが、その中で、「1対多数」の情報伝達手段を考えてみます。

一人の人が多くの人に情報を伝える手段として、視覚に訴えるもの、聴覚に訴えるものなどありますが、聴覚に訴えるものとしては、原始的なものでは「手を口に当てて大声を出す」「メガホンを使う」などがあり、電気音響技術を使ったものとしては、簡単なものではハンディタイプのトランジスタメガホン(俗称:トラメガ)などから数万m2をカバーできるような大規模拡声システムまであります。

その中で特に電気音響を使用して音を伝えるシステムを「PAシステム」と呼びます。PAとは「Public-Address」の略で「広く大衆に話しかける」と言うような意味を持っています。

PAシステムは目的や方法の違いで下記のように大別できます。

1)放送用システム(非常用)(一般放送用)

2)SRシステム(Sound Reinforcement System)

3)会議用システム

 

放送システムは、非常用と一般放送用に大きく分類できます。どちらもアナウンスメントを主目的にしたシステムで、音声の明瞭度や設備の信頼性などに力点が置かれています。

つまり放送システムにおける「良い音」というのは必ずしも音楽的に良い音である必要は無く、一番聞こえやすい音が良い音なのです。そのためには、音の低い部分をカットしたり、中域の音を強調したりして明瞭性のある音(聞き取りやすい音)に加工します。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION