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6. 幼児期の聴覚言語リハビリテーション

 

難聴幼児の早期教育・指導についての歴史的な経過をみると、1962年に文部省は聾学校幼稚部(3歳児以上)の全国的な設置を進めている。さらに、1975年には厚生省が難聴幼児通園施設での0歳からの乳幼児指導に法的根拠を与え、聾学校でも教育相談が試みられるようになった。1980年代には、他覚的聴力検査(ABR)の研究開発によって乳児の聴覚診断技術が向上し、0〜2歳児の早期リハビリテーションの促進に著しく貢献したといえる。

その結果、全国の難聴幼児の療育・教育施設では0〜2歳児が、指導対象児の半数を占めるまでに至っている。現在は聾学校(108校)、難聴幼児通園施設(26施設)、総合リハビリテーションセンターや大学病院において、独自のシステムで聴覚言語リハビリテーションの実践が行われている。本章では一つのモデルとして医療施設におけるリハビリテーションの実際について以下に述べた。

1)初期リハビリテーション

初期には、1)聴力検査、2)補聴器適合、3)難聴児の発達評価・指導、4)両親のガイダンス・カウンセリング、5)社会的資源の利用(身体障害者手帳の申請)について、難聴児の養育にあたる家族を中心として、病院の医師、言語聴覚士、病院や福祉事務所のケースワーカーや補聴器販売店デイラーが連携してプログラムが進められることが重要である(図2)。地域によっては、難聴通園施設や聾学技の専門職が中心となる場合もある。

週1回、約2カ月の通院システムで、1回の来院日には2〜3領域の診療を組むことができる。個別的な発達相談や両親カウンセリングは適宜行い、2カ月の通院中に身体障害者手帳・補装具の交付申請を開始できれば難聴児の家族にとって至便である。同時期に数家族が通院し、家族間の交流が通院の際の大きな支えになっている。

 

図2 初期リハビリテーションのスケジュール

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