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図1 音声言語のコミュニケーション過程

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3. 難聴の発見と原因

先天性の高度感音難聴児は、1000人に1人から1.7人程度認められ、40dB以上の軽・中等度難聴を含めると1000人に4人程度と米国やEC諸国では報告されている。例えば人口が5万人、年間出生児数が500人の市町村では、高度難聴児は2年に1人程度ということになる。

染色体異常によるダウン症児では外耳道が狭く、耳管機能の低下等があり、滲出性中耳炎による難聴の発生率は20〜60%と高く、反復する頻度も高い。感音難聴についても発生率は1.9〜5%と報告され、定期的な聴力検査と耳鼻科検診による聴覚管理に注意が必要である。

難聴の原因については不明な例が多いが、家族性、顔や耳に奇形がある例、胎児期に母体が風疹を罹患した例、周産期の仮死や重症黄疸・未熟児などでは、統計学的に難聴の発生率が高い。髄膜炎・おたふく風邪罹患により難聴を発症する例や、または、アッシャー症候群、ハンター症候群のように他の症候に難聴を併せ持つ例がある。これらの既往があるときには難聴がないか幼児聴力検査ができる施設や専門医に相談する必要がある。

 

4. 聴力検査と難聴の判定

幼児では認知発達が十分でないので、発達に応じて玩具を利用して聴力検査を行う。検査には聴性行動反応聴力検査(BOA),条件詮索反応聴力検査(COR),遊戯聴力検査(play audiometry)などがあり、これらの検査が使える年齢と得られる結果を表1に示した。発達年齢に応じて、適用する検査を順次、変えていくことによって、聴覚リハビリテーションに必要な情報を加えることができる。一方、脳波を用いた検査では、聴性脳幹反応聴力検査(ABR)がある。睡眠下に検査を行うので生後直後から成人と同じ精度で域値検査ができる。知的発達障害児の聴力検査としても極めて有効である。

これまで難聴と診断された幼児についてその時期を検討すると、0〜1歳台に42%,2歳台までには74%とかなり早期であると報告されている。したがって、保健所乳幼児健診(4カ月児)では、先の難聴のハイリスク因子をもつ乳児についてとくに積極的な経過観察を行い、10カ

 

 

 

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