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適応を決めるのではない点で共通しており、実際には後述する補聴器の装用効果も含めた総合的評価によって適応を決定します。

小児側のうち標準純音聴力検査や語音聴力検査ができる年齢域(4〜5才以上)では成人に準じた検査ができますが、人工内耳の適応で問題となるのはそれより低年齢の1才〜4才の乳幼児がほとんどです。標準純音聴力検査ができない小児の聴力評価ではBOA(聴性行動反応検査)、COR(条件詮索反応聴力検査)、あるいは遊戯聴力検査などの聴性行動観察による聴力検査とABRなどの他覚的な聴力域値の測定を行います。

遊戯聴力検査は、一般には2〜3歳ころからできるとされますが、人工内耳の適応となるような高度難聴児では必ずしもこの年齢で可能とは限らず、3歳から4歳になって初めて確実に行える場合が少なくありません。したがって、早期に聴力評価が必要な状況では相対的にBOAやCORによる聴力検査の比重が重くなります。

【BOA(聴性行動反応検査)】

乳幼児が大きな音、例えば拍手や大声、楽器や玩具の音などをを開くと、それまでの行動を中断したり、眼瞼反射(まばたき)、モロー反射、眼球を動かして音源を探る、振り向く、泣き出す、笑うなどの特有の反射、反応行動を示します。この様な聴性行動反応を観察して聴力を評価するのがBOAです。音源は玩具、フライパンとすりこぎの様な日常生活用品、楽器、純音、ウオーブルトーンなどで、いずれの場合でも、検査室内で音源から被検児の距離を計り、その位置で何dBの音になるかを騒音計で計測しておきます。検査に際しては、あらかじめ患児のおおよその発達状況を把握しておかなければなりません(発達検査の項を参照)。検査時にはお母さんが息児を抱くかそばにいて子供を安心させる様にします。できればビデオ録画も併用して息児のかすかな行動の変化も捉えるようにします。反応が確かなものかどうかを確かめる必要がある一方で、刺激を繰り返すと子供が興味を示さなくなりますから手早く、しかも確実な検査を2〜3回行うことが正確な聴力評価につながります。

【COR(条件検索反応聴力検査)】

CORは3歳未満の幼児の標準的聴力検査法です。まず、音がすると子供の興味を引く視覚刺激(おもちゃ、回転灯など)が与えられる条件形成を行い、これを利用して様々な大きさの音に対してこの行動を観察し、聴力レベルを判定します。CORは発達に問題がなければ生後5ヶ月くらいから行え、1歳ころにはほぼ全例で可能になります。しかし息児が聾や重度難聴の場合は音が条件刺激とはならず、条件形成を行うのが困難な場合が多く、この場合は音への反応の観察だけとなります。

【遊戯聴力検査】

遊戯聴力検査の原理はスピーカーあるいは受話器から音が聞こえたら患児がスイッチを押し、それによって光がついた箱の中のおもちゃや動く電車を覗く、あるいは音が聞こえる度に「おはじき」や「ビーだま」を動かしたり箱の中に入れる遊びを覚えてもらい、検査音を増大させながら聴かせ、関値を推定するものです。受話器から音を聞かせる事が出来ると左右の耳を別々に検査できますが、この様な遊びができるのは通常2歳後半から3歳以降で、高度難聴児ではさらに加齢を待たないとこの検査に応じられないことも少なくありません。

【聴性脳幹反応(auditory brainstem response: ABR)】

ABRには聴力の客観的なデータを提供する利点はありますが、発達の影響を受ける、

 

 

 

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