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しかし、全ての難聴耳に補聴器が適応できるかといえば、必ずしもそうではありません。音が聞こえ始めるとすぐうるさく感じてしまう耳や補聴器からの情報が極端に限定されてしまっている場合には適応が難しい場合もあります。また、補聴器は、ききたい音だけを選択的に増幅するのではなく、全ての音を増幅してしまいますので、雑音の多いところなどでは、大変うるさく感じることがあります。そうした種々の音の中から選択的に自分に必要な音をきき出す力をつけていくことが、補聴器を上手に使っていくためには欠かせません。そうしたことを側面的に援助してくれるのが補聴力ウンセリングになります。

 

3. 補聴器のフィッティング

 

1)補聴器のフィッティングの手順

補聴器適用は大人と幼児では異なりますが、適用までの一般的手順(大沼1997)を図7に示します。先ずは、「規定選択法」により補聴器の電気音響的特性を規定し、その特性を実現できる補聴器で装用者のニードに応じた補聴器を選択したり調整することから始めます。

このときに、閾値などの聴能学的なデータが必要になります。この「特性処方的手順」で特性を決定する際にフィッティングルールが適用されます。その上で、装用者に適すると考えられる電気音響学的な特性を実現できる複数の補聴器を比較選択して、装用者の聴覚印象度のよい最適補聴器を選びます。そして、その最適補聴器について日常生活場面を含めたさらに細かい「装用試行的手順」によりきこえの状態を評価しながら調整がなされていきます。このように補聴器は、装用者が生活していく上で自己のニードを満足させられるように何度も十分に時間をかけて適用されていきます。ですから、その都度、補聴力ウンセリングが平行してなされることが大切になります。また、装用者や評価者の満足がいかない時には、再度「特性処方的手順」に戻って補聴器そのものの選択からやり直すことも必要になります。

 

図7 補聴器適用までの手順(大沼1997)

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