日本財団 図書館


有名なビスマルク宰相による国民健康保険の誕生です。中世のホスピタルまたはホスピスにしても,教会という特殊な組織が提供したものでした。ヨーロッパにおいてはその名残がまだ大きく残っているとはいえ,今日のホスピス運動との根本的な違いは,それが一般人の“目覚め”による動きであり,一般人が行政に働きかけている点です。

ヨーロッパのボランティア思想の背景

  “目覚め”ということに関連して,今日のホスピス運動がドイツおよびヨーロッパで,さらには人間社会でどのような意味をもっているかについて考えるとき,ヨーロッパ文化の歴史を少し振り返ってみることが役に立ちます。物理学者で生物学者,同時に歴史家でもあるエルンスト・ピーター・フィシャーが彼のエッセイの中で次のようなことを書いているのを最近読みました。一部を要約して引用いたします。
 「17世紀の初めを歴史家は科学革命のエポックと見ます。この時期に科学は合理性を主張するようになり,非合理性と感情的な要素を締め出し,その傾向が今日まで続いています。ドイツ人の天文学者ヨハネス・ケプラー(1571-1630),イタリア人のガリレオ・ガリレイ(1564-1640),実験主義を唱えたイギリスのフランシス・ベーコン(1561-1626),それにフランス人哲学者ルネ・デカルト(1596-1650)が当時の革命に携わった代表的なヨーロッパの四重奏者(クワルテット)と呼ばれる人物です」
 ご承知のように,いまから400年前には人は地球が平たく,その上にクリスタルの蓋がかぶさっており,太陽や星が天蓋に沿って地球を中心に動いていると考えていました。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイが宗教裁判を受けたのは有名な事実です。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION