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ケプラーは神学をも学んでいたそうです。後になって王室付き天文学者および数学者として仕事をしていたとき,驚くべきケプラーの法則を見つけ,その中に惑星が楕円形の経路をとることも記しています。しかし,まだ17世紀の初めの天文学者ケプラーにとって.「惑星は生き物で,地球には人間と同じように魂があり,大雨が降れば病気になる」というように考えたそうです。物質にも魂があるという考え方がまったく一掃されたのはニュートン(1643-1727)の時代,すなわち1700年前後といわれます。
 先に述べたエッセイの著者であるフィシャーは,1600年を境とする人間のものの考え方の次のような違いをあげています。ちなみに1600年という年は,日本では江戸で徳川幕府が成立されたときです。
 1600年ごろまで,人は精神的支えを「信仰」に求めましたが,その後からは,「自分で考えることによって得る確信」を,生きる支えとするようになりました。「伝統による知識」は「実験による知識」にとって代わられ,「母なる自然」は,「物質と現象としての自然」へと変貌しました。“動き”の観念は,“変遷”から“場所移動”となり,“質−審美性”よりも“量−機能性”が追求される時代になりました。

科学万能主義からの脱皮

 科学革命によって人間生活の多くの面は大きく改良・改善されましたが,その方向にも歪みと行き詰まりがはっきりしてきました。その昔,私がインド,パキスタンを旅行したときに見た子供たちの姿,アフリカの飢饉や政治的避難民の収容キャンプのニュース画面,今年の「世界祈りの日」の対象となったマダガスカルの貧民たちの様子は,科学革命の恩恵とは関係のない人間の姿です。

 

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