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 ある方から寄付されたという一軒家を改造してできたホスピスですが,通りからはこれがホスピスとはわかりません。責任者の尼さんと看護婦さん,ボランティアによって運営されています。
 シスター・アナーリオバと患者さん(ゲスト)です。彼は毎日,庭のベンチで横になって,一杯の赤ワインを飲むのが最後の楽しみであったそうです。
 この建物にはエレベーターがありません。介護に当たる皆さんが毎日彼を2階から庭に助け降ろしたとのことでした。 実は他のところで,ホスピスをつくろうという話し合いに出席したことがありましたが,そこではまず,エレベーターや駐車場が問題にされまし心そのグループからは結局ホスピスは生まれませんでした。
 このオルガンを弾いているゲストは,ホームレスの人だったそうですが,この家で亡くなられるまで,皆の人気者だったそうです。
 私は,このテーマをいただいて初めて「ホスピスボランティアの専門性」について真剣に考えたのですが,実は2年半前のドイツのホスピス全国会議で「名誉職としてのホスピス職員」というテーマが取り上げられました。ホスピス運動は,数少ない人格者による個人的な偉業といった初期の性格を脱し,全国にくまなく設置されるべき事業へと発展してきていま凡その際,ホスピス運動の本来の理念が失われないためにも,また出資者,政治家および公共社会,世間からの信頼を得るためにも,「名誉職員養成の基準」を定める必要があるというのが,このテーマが取り上げられた動機でした。
 ホスピスの仕事は,参加者の信条や信念だけでできることではなく,行政と資本の両面からの支えが必要な事業です。ドイツにおいては,病人や身障者といった社会的に弱い立場に立たされた者への社会保障は,すでに1883年に,「労働者疾病健康関係法」によってできました。

 

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