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私は50年前の老尼のことを思い出して改めて本当のクオリティ・オブ・ライフとは何だろうと考えざるを得ませんでした。

新しい意識の目覚め

 ドイツでも最近,医療の急激な機械化にブレーキをかける考え方が少しずつ民間の間に生まれてきました。生命のクオンティティ(長さ)ではなく,クオリティ(質)に人々は真剣に目を向け始めました。それと同時に,国民保険財政難のために,高価な病院治療や介護院での自己負担の負えない家族の問題,治療不能な末期患者を収容できない病院経営問題が話題になっています。われわれが家庭訪問の依頼を受ける家庭の事情もいろいろですが,意識的にせよ,まだ無意識にせよ当人や家族に,「自分の人生の終わりを自分なりに生きよう」とする共通の姿勢が見られます。ホスピスボランティア職員は,この新しい認識と姿勢にささやかな支援を送ろうとする者たちです。さらには,ホスピスはホスピス本来の意義に基づいた,身寄りのない人たちへの最後の庇護の場所であらねばならない,と考える者たちです。
 ハイデルベルグの小さなホスピスは尼さんによって管理されていますが,一般の人間のほかに,道で行き倒れになっていた人間もかつぎ込まれてきたりすると聞きます。このホスピスの経営は,?―保険(健康保険/社会保険/介護保険),?―フライブルグにあるカトリック教会本部から出る資金,それに?―民間の寄付の三本立てでまかなわれているそうです。浮浪者も収容できるホスピスの存在は,これからのホスピス運動のためのたいせつな方向指示器であると思います。
 ここで,その責任者である尼さんからいただいてまいりました写真を数枚ごらんいただきます(写真略)。

 

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