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 約6ヵ月の養成期間がすみ,私たちはある日曜日の教会のミサで,グループの誕生の祝福を受け,同時に市民にわれわれの存在を知ってもらいました。契約には2年間の仕事の義務づけと,守秘の義務が記されていました。教会の名誉職員としての保険と,家庭訪問のために必要な交通費の支給も約束されました。交通費支給は,とくに学生や年金受給者のボランティアのためにたいせつな考慮であると思います。さらに上級講座や特別講演に無料で参加できる権利,スーパービジョンヘの招待(義務)も与えられました。スーパービジョンは1ヵ月に一度集まって,家庭訪問をしている仲間が抱えている問題をグループで取り上げて話し合う機会で,そのための教育を受けた指導者(私たちの場合は牧師)が司会を務めてくれています。これが私が参加しているハイデルベルグでの家庭訪問グループの養成講座とグループの現状です。

ある体験から

 ここで私の体験例を一つお話しいたします。
 昨年の初めに私はグループの仲間と2人でチームを組み,交替で週に3回,1人の女性に付き添いました。彼女はその2ヵ月前に脳卒中の疑いで病院に運ばれたのですが,病院で脳腫瘍が発見され,即刻手術と放射線治療を受けました。しかし治療効果のないまま,クリスマス前に自宅に戻りました。家には2人の娘が一緒に住んでいて,彼女たちが仕事に出ている午前中,4時間から5時間の間病人に付き添うのがわれわれの役目でした。
 このケースのいちばんの問題点は,本人にまだ真実が知らされていなかったことでした。2ヵ月前まで元気であった彼女とその家族にとって事態の変化があまりにも急激であったため,正確な予後を当人に知らせられないまま退院後1ヵ月がたっていました。

 

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