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この講座採用インタビューに疑問をもつ者もいますが,私の知る限り,ほとんどの企画者がそれを行っているようです。
 私がこの採用インタビューを受けたのは,私の夫が急死をしてから3年半たったときで,それまでに私は,健康保険を使ってグリーフワークのための専門家の助けを2年近く受けていました。それに加えて,私の住んでいる田舎町のキリスト教会福祉事務所が提供してくれたグループによるグリーフワークも経験していましたが,ここでもそのために教育を受けた専門家がグループを指導してくれました。喪失の体験はそれを自分の中で受け止められるようになっていれば,ホスピスボランティアの仕事のために貴重な体験であります。しかし,喪失体験から少なくも1年間は,当事者の立ち直りのためにも必要であろうと私も思います。
 「生きている」ということが実はどんなことであるかを知るのには,すなわち生と死について考えるには自分自身がいちばんよい材料です。私たちは普段周囲に迎合して生きていることがほとんどですから,真の自分を知ろうとし,時にはそれを他の人間の前でさらすことは勇気のいることです。しかし,死を目前にした人の人間の目は,われわれのうわべの衣を突き抜けて,われわれの真の姿に向けられています。私たちはそのような人たちの前に裸の人間として立たされています。ボランティア養成の場でも「自分自身が死と直面させられたときの,自分の姿勢を知らなくて,終末期の病人に付き添うことができるだろうか」と問われます。
 いわゆる「自己体験」の作業は,提供された材料,たとえばいろいろなモチーフの写真や絵を使って自分の過去から現在に至る経験や感情や信条を表現する試みです。時には音楽を聴いたり,絵を描いたりすることもそのための方法として試みられました。ホスピス教育講座に必要なものは,何よりも自分を知るための優れたプログラムだと思います。

 

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