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 それから,アートプログラムに押し花ではがきを作るというものがあるのですが,その会に出ていた女性の患者さんが,自分が作ったはがきを使ってお姑さんにお手紙を出した。そうしたら,そのお姑さんから感謝と励ましのお返事をいただいたということを,そのとき担当したボランティアに返してくださった。それが非常に嬉しかったと。
 それからナースからは,お子さんがいないご夫婦の患者さんで,奥様が肝臓がんで亡くなられたのですが,だんだんからだが冷たくなっていく奥様に,―山登りを通してお知り合いになったご夫婦だったのですが,ご主人が居ても立ってもいられなくなって,山登りをする人というのは,冬山で遭難すると,自分の体温で相手のからだを暖めるというのはよく聞く話なんですが,まさにそれを実践なさって,冷たくなっていく奥様の隣に自分が上着を脱いで,寄りそいながら最後を看取られた。そのことに非常に感動したという話が披露されました。「そういうことができる環境の中で働けるのがうれしい」と。
 あるいは,お花の水かえをボランティアがしているのですが,バラの花が枯れかかった状態になっていた。「このお花はしぼんで枯れかかっているので,もうお取り替えしましようか?」と聞いたら,「そのお花には天使がいるの」と患者さんが言われるのだそうです。バラの花のところが天使の頭で,枯れた葉っぱが天使の羽根のように見えて,確かにそこには天使がいるというのがわかって,それが本当にボランティアやそういう方から受けたことへの感謝の気持ちとともに表された言葉だったそうなのですが,そういったものをいただいたという話もありました。
 それぞれが活動や仕事を通して受け取った感動とか力を交流会でお互いにまた確認し合ったのです。

いただくたくさんのもの

 その前後に,あるボランティアの方とちょっとお話をしたら,「何かをさせていただく」という言葉をよく私たちは使うけれども,その“させていただく”という言葉の意味が本当によくわかると言われるのです。“してあげる”のではなくて,“させて”それで私たちが“いただいているんだ”と。「何かたいせつなものをいただいているんだということを,本当にしみじみ感じるんですよ」と言われたボランティアがいて,「本当にそうだなあ」と,私のほうがまたそこでその通りだとうなずきながら聞いていました。

 

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