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たとえば同じ悪性腫瘍の病名,同じ転移,それから同じような年齢であっても,一人一人違う患者さんなのです。それぞれ家族との関係,いままでの人生,歴史というものは,一人一人非常に味わい深いものをおもちなので,そういう一人一人に私たちが一人でケアができるかというと,決してそうではないのです。そこからホスピスケアはチームでやるものだという発想が生まれてくるわけですし,またチームでなければできないものだということになってきたのだと思います。
 私は1997年にオーストラリアのホスピスに10日ほど研修に行ってきましたが,ナースが集まる部屋のドアの後ろに,「ナースはチームなしには生きていけない」という標語が大きく書かれていました。
 そのチームには,医師や看護婦,ボランティア,栄養士,薬剤師などいろいろな職種の人たちが含まれるのですが,チームでやる,チームでやらなくてはできないのはわかっていても,いいチームワークを組んでいくというのは非常にむずかしいことなのです。
 では,そのチームの中でボランティアにはどんな役割があるのかということを考えたときに,「ボランティアはホスピスに外の空気を運んできてくださる方」という言い方がされます。日野原先生,そして佐々木チャプレンのお話を聞いていて本当にそうだと患ったのですが,患者さんのために何かをしなくてはいけないのではないか,何かをしたいという非常に熱い思いもおもちだろうとは思うのですが,そればかりではないということをつくづく感じさせられました。
 ある患者さんの例をご紹介しましょう。69歳の女性で,乳がんの再発と大腸がんのダブルキャンサーをもっていてそれぞれがまた転移をしていました。乳がんは十数年前からのものだったそうですが,ホスピスに入院される1年前にご主人を肺炎で亡くされたのです。

 

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