日本財団 図書館


気管切開をするとかしないとかいうことよりも,そうやってそばにいて関わりつづけるということが必要なんだという気がしてきました」というように,お話の中で自分でもう結論を見つけられた。奥様の気持ちの中では,相談に来る前に,半分結論は出ていたのだけれども,誰かと話をする中で,その結論にピッタリとフォーカスが当たっていって,いま自分がいちばんしたいこと,したほうがよさそうなことが明らかになっていくというプロセスがあるのだなあ,という思いがしました。
 先ほどの“悩む”という話に関連しますが,何でその話が出てきたかというと,告知を受けたときに,その大学病院の先生から,学生に講義をするように,ご主人と一緒に「がんです」と告げられたと。その次に会ったときに先生は,その患者さんご本人に向かって「いのちの期限をあなたは知りたいですか?」と聞いたそうです。そうしたら患者さんであるご主人が「私はそれは知りたくありません」とおっしゃった。その場はそれで終わって,あとで奥様が先生と話したときに「やっぱりあなたのご主人は生きることに未練があるんだなあ」と言われたという,その言葉に非常に奥様はショックを受けて,「未練のない人なんて,いないじゃないですか」ということを訴えて,逆にそれが悲しみとともに不信感につながってしまって,多分,その気管切開をする,しないというあたりも決断ができないでいたのかというようにも思います。ですから,その“悩む”というところでも,信頼関係があれば,もしかしたら即座に「やる」と決断されたかもしれないのですが,そうでなかったために,迷いが出てしまったのかと思われるようなケースでした。

患者さんの個別性とケームケア

 話は変わりますが,在宅ケアをしているときもそうだったのですが,患者さん一人一人の違いというのもすごく感じます。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION