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 ボランティアというのはいろいろな定義がされると思います。いまの社会にあっては,病院や施設,あるいは学校なども,きっちり管理されていく傾向にあります。そういう中でボランティアというのはワクにはまらないところをもっている。それはそこに住んで苦楽を共にするような意味とはまた違う出入りをする人です。それは考えようによれば,住み込んでシステムに組み込まれていかざるを得ない人々には見えないことを,出たり入ったりする中で見えるかもしれない。だから,逆に言うと,そこに住む者こそ外から出たり入ったりする人のような感性をもたなければならないし,一方,ボランティアとして出たり入ったりする人は,そこにずっといる人の悲しみとか制約とか思いをわかるようなボランティアになってほしい。それは二元論的にこちらとあちらとに分かれるようなものではないのではないかと思っております。
 しかし,現実的なところでやはりボランティアというのはそのシステムに完全に組み込まれないようなところをもっている。だから無責任であっていいとは思いませんが,皆さんがボランティアを続けられる限りはむしろ自由なところを何か持ち込んでいただきたいと思います。とっぴな発想があったり,システム側の人間からは「エッ! そんなこと」というようなことを,しつこく追求して嫌がられてほしい」また,施設のほうではそういう方々を受け入れる度量がなければ,どんどんそのシステムは枯渇していってしまうのではないか。その辺を自分はシステム側にいますからつくづく思っております。
 そしてまた,受け入れ先では,ボランティアを受け入れる一つのシステムが新しくできていくことでもあります。それはボランティアを教育したり,指導したりというようによく働く場合もありますが,逆にボランティアを単なる労働力のように見て使ってしまう場合もあります。大きな施設というのはある意味で非常に管理が強くなる宿命をもっていますので,その弊害もいろいろあると思います。

 

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