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 何年か前に見送った小学生の女の子,Aちゃんの話をしたいと思います。Aちゃんが亡くなってからは,その後何度かお父さんとお母さんとキリスト教でいう記念式―いわゆる仏教でいう三回忌とか七回忌というようなことを繰り返してきましたので,私の心もご両親の心もあるところに落ち着いてきている,ですからここでも少しお話できるのではないかと思っています。
 Aちゃんは小児がんで,たいへんつらい闘病生活をしていました。ベッドに寝たきりの状態になっていて,さらに骨が冒されて寝返りを打つだけで大腿骨が骨折してしまうという非常に厳しい状況になっておりました。Aちゃんは絵が好きでした。私が日曜学校で子供たちのために自分が好きな絵を描いているのですが,そこにAちゃんにも参加してもらって一緒に絵を描けたらいいと思って誘いに行ったのです。そのとき,Aちゃんとこういう会話をしました。
 「羊飼いさんが羊をいっぱい飼っていました。100匹飼っていたら,1匹の間抜けな羊さんがどこかへ行ってしまいました。その羊飼いさんは1匹1匹に名前をつけてたいへんかわいがっていたので,99匹を管理しなければならないと心が痛みながら,やはりそれを置いてその1匹を探しに行きました。そうして,崖っぶちでおっこちそうになって引っかかっていた間抜けな羊をようやく拾い上げて肩にかついで帰ってきました。みんな,喜んで下さい」,そういう聖書のお話がある。これはルカ福音書の15章にあるのですが,その話を絵にしょうということになって,「羊をだっこしている羊飼いさんを描こう,描けるかな?」とか相談した。

 

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