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しかし,感情の表現をしやすく,気持ちを吐き出しやすくしてあげることはできます。そして心の痛みを認めるということです。患者さんや家族が,これから起こり得る問題を事前にある程度予期できるようにすることです。
 私たちが在宅でケアをする際の重要な役割としては,とくに自宅で死ぬということはどういうことか,事前にどんなことが起こりうるかということを説明し,準備(予測)できるようにしてあげる。そして必要に応じてどんな人を呼べばいいのかということもわかるようにします。そうすれば,家族自体がその状況をコントロールできるようになり,また自信を持って対応できるようになります。
 それから,患者さんあるいは家族が持っている非常に複雑でむずかしい感情,情動の問題をノーマライズするという役割もあります。また,同じ情報を家族が分かち合えるように手助けをしていきます。家族とのミーティングでも,これは時間の無駄だったと思われるようなものは,私が参加した中では一つもありません。家族と一緒にいろいろ話をすると,小さな子供であってもむずかしい質問をしてきます。家族の危機に当たって,家族の人たちが自分たちにも力があるのだ,より強くなれるのだという自信,安心が持てるように手助けをしたいと思います。
 私たちが考えなければならない問題として,家族がどうなるかわからない不確実な状況に対応していくために,どんな援助ができるのか,過去をそのまま流してしまうことは可能なのか,それから意思決定をどのようにして誰にフィードバックしていけばいいのか。また,いつ,いかにして私たちは対決しなければならないのか。たとえば否定とか拒否にあった場合に,それにどのように対応していけばいいのか,どうやって解きほぐしていけばいいのか,どうやって聞いてあげればいいのか。また,ただでさえ悪い状況を,私たちプロフェッショナルがさらにひどい状況にしてしまうことがあるのか。

 

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