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最近エイズで亡くなった方がいるのですが,亡くなるまでの1週間の間に32人のそれぞれの専門家が彼の家を訪問していたことが判明しました。それから恐怖,そしてどうなるかがわからないという不確実な感じ,またそううつ感といったものもあります。患者さんや家族がどのようにこういう状態を見ているのかを聞いてあげることも重要です。
 私は病棟のマネージャーをしていたときに,非常に厳しい教訓を学びました。23歳の若い男性の患者さんがいました。週末に家に戻っていいということで戻りました。ところが日曜日の夜に地元の病院に入院し,そしてレントゲン室の外のストレッチャーの上で亡くなってしまったのです。私は何ということかと思いました。ところが両親の話では,彼はずっと寄宿舎のある学校に入っていて,そのあとは軍隊に入ったそうです。親から見ると,息子はそういった状況でずっと育ってきたので,ああいう状態で死んだのも彼らしい死に方だと言うのです。このエピソードから,私は自分の価値観をほかの人に投影して考えないほうがいいのだということを学びました。
 話は戻りますが,もしもエモーショナルなケアを行わなかったらどうなるでしょうか。パニック,それから恐怖感が生まれ,自分にいま起きている状況を否定していきます。ただし,この否定あるいは拒否というのが,その状況に対応する効果的な方法である場合もあります。それから家族の中で距離が生まれてしまい,孤独,疎外感,そして怒りが爆発することもあります。

家族に自信をもたせる

 では,私たちはプロフェッショナルとしてどのようなことができるでしょうか,あるいはやりたいと思っているのでしょうか。状況をよくすることはできないかもしれません。

 

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