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いまやっていることがこれでいいのだろうかと自問自答するときは,できれば職場を離れて,時間を確保できる場所でやることです。

精神的サポートをどうするか

 では次に,情動的なケアについて考えていきたいと思います。有名な精神科医の言葉に,「がんというのは,からだに影響を与えるのと同じくらい家族に対して影響を与えるものである。そして,それも治療をしなければ悪化してしまう恐れがある」というのがあります。
 なぜ患者さんや家族と話をする必要があるのかといえば,これから先悪い事態が起こらないように予防するという意味でコミュニケーションをきちんと維持していくというのが目的です。もしコミュニケーションをしていなければ,終末期の病気はどのようなインパクトをもつのでしょうか。
 まず第1に,患者,家族が社会的に孤立したような疎外感を感じるようになってしまいます。役割が終わってしまい,もう自分は母親の役割を果たせないとか,妻の役割を果たせないという気持ちを持つに至ってしまうでしょう。
 それから,なぜ私にこんなことが起きたのかという霊的な問題もあります。また,私たちが人生でどんなことに喜びを見出しているのかを考えてみると,人と会って食事をしたり,休日にどこかに出かけたりするということが楽しみなのに,患者さんはもう完全に弱り切った状態,そしてそういった楽しみを得られないという状態を容認しなければならなくなってしまいます。
 私たちがあまり気がつかないことですが,外部の人たちが自分たちの家庭に侵入してきたと感じてしまうということもあげられると思います。

 

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