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私の30年の経験からいえることは,1対1で対面するという状況をつくることがいちばん大切であり,それに代わるほかの道はないということです。
 もう一つお話ししたいのは,患者さんに尋ねても,家族に尋ねても,彼らが一番安心するのは24時間体制になっているということです。24時間だというと,夜中が忙しくなりすぎるのではないかと危惧したのですが,特にそういうことはありませんでした。
 昨年,ある3か月間を対象に調査したのですが,いわゆる通常でない時間外の電話は369件だけでした。1か月約120件,1日4件です。369回の電話のうち実際に家庭訪問をしたのは53件でした。そのうち18時から24時というのが75%(40件)でした。家庭訪問をしたのはナースだけで,医師が行く必要があったことは一回もありませんでした。ですから,患者本人と家族が納得して安心できる,しかもコスト効果が高いサービスはこの24時間体制だと言い切ってもいいと思います。ただし4人のナースがチームに入っていなければ24時間体制はできないだろうと思います。

コスト効果の高い在宅ケア

 私(IreneHigginson)から2点ほど追加したいと思います。まず料金の支払いに関してです。英国でも医療費の予算は日本と同じように削減される傾向にあります。そういう状況を変える意味でも私たちは政府に対して,在宅ケアはコスト効果が高いという情報をデータに添えて提供し,政府を説得していかなければならないということです。それとあわせて一般社会へのロビー活動も怠ってはならないと思います。
 病院が緩和ケアにどういう態度で臨むかということは,医師や看護婦については必要だからその人件費は出しましょうとはいいますが,ソーシャルワーカーなどは病院としては必ずしも必要とは認識していないから,出さないという状況なのではないかと思います。

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